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May 13, 2009

op-ed / commentary


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junichi ikeda

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InnovationではなくTransformative

May 13, 2009

op-ed / commentary


author
junichi ikeda

先日のエントリーでも触れたが、オバマの大統領就任以後、彼が大統領選に向けたキャンペーンの際に“Change”と訴えていたせいか、“Transformative”や“Game- changing”という言葉を聞いたりみかけたりすることが多くなった。

Transformativeは、transformの形容詞。Transformは言うまでもなく、「形を変える」「変型する」ということ。スピルバーグの映画で“Transformer”というのがあったけど、あの映画では、自動車がロボットに「変型した」わけだけど、とりあえずああいう「Aという形からBという形へ変わる」というイメージ。Innovationが「前人未踏の、全く今まで見たこともなかったこと」を表すのに対して、Transformativeは、「今ある形を出発点にして、あるいは足場にして、次の形になる」というニュアンス。

Transformativeという言葉は、オバマを指してTransformative Presidentといったり、スティーブ・ジョブズをTransformative CEOというように使われる。あるいは、オラクルがSUNを買収するのはTransformative Dealなのか?、など。いずれも、今までの仕組み(政府や企業のありかた)ではうまくいかなくなったから、それを変える必要がある。けれども、資産価値がなくなったビルを破壊して更地にしてから建て替えるような、全てご破算にしてゼロベースで作り直すなんてことは組織や会社の場合はさすがにできない。今ある仕組みやシステム、組織や会社を土台にしながら今の環境に合わせて変わらざるを得ない。そうした変容を促す存在や行為をTransformativeと表現する。

つまり、Transformativeというのは、「(自己)変型を触発するような」、もっといえば「自己革新惹起型」というようなニュアンスと捉えるといいだろう。そして、GMやクライスラーのケースを踏まえれば、現在の状況でこの言葉が使われるのは、組織(企業)が破綻し外部からその立て直しのための人物がやってくるような、Turnaroundの事態を回避し、その組織が自力で変容することを期待する表現と捉えるのが妥当だろう。

経営戦略の文脈で登場するinnovationは、90年代のVenture Capital(VC)の隆盛の中で広まってきたもので、「苛烈な新しさの追求」という行動姿勢の烈しさ(もっといえばクレイジーなところ)や、「新しいテクノロジーによる生産性の向上」というニュアンスを持っていた言葉。80年代のBuyout fundによるコングロマリットのスリム化を受けて、VCによるinnovationの喚起が促されたのだった(その際たるものがアメリカのITバブルだったわけだが)。

Innovationという言葉が「新しい」とか「ニュー」ぐらいのニュアンスで、すっかり単なる販促用語になってしまった観のある日本の状況を考えると、少なくとも、企業の経営に携わる人たちの間では、このTransformativeという言葉に気にかけてみてもいいのではないかと思う。

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