絶滅危機種としてのニュース・ビジネス

May 15, 2009

op-ed / commentary


author
junichi ikeda

今のアメリカでは、ニュース・ビジネス、ジャーナリズムに対する危惧がとまらない。

4月末に、ジャーナリズムの未来について、連邦議会の上院、下院で担当する小委員会(subcommittee)でそれぞれ公聴会が開かれ、ビジネスとしての側面、社会的役割としての側面(the Fourth Estateとしての側面)について議論が行われた。

今週のThe Economistでは、こうした動きを受けて、「ニュース・ビジネス(したがって、新聞に限らず、テレビのニュース番組や、ケーブルのニュースチャンネル、また、雑誌も含む)の未来」について、小特集的な記事を掲載している。アメリカを中心にしながらもイギリスや英語圏諸国のことも含めた解説を行っている。

The rebirth of news
【The Economist: May 14th 2009】

Tossed by a gale
【The Economist: May 14th 2009】


ニュース・ビジネスがいかに苦戦しているかについては今更語る必要はないだろう。

記事が取り上げている動きとしては:

● boutique aggregator もしくは news-plusという編集
一定のコンテキスト、たとえばアメリカであれば、デモクラット支持かGOP支持かを予め鮮明にして、事実の報道と、それに対するコメンタリー(評価、解説、今後の見通し、など)を加味したものを提供する動き。ウェブでは、Daily BestやDrudge Reportのようなサイト。また、党派性を全面に押し出したものとしては、リベラルではHuffington Post、保守ではFox Nationが上げられている。ケーブルニュースでは、リベラルでMSNBC、保守ではFox News。ちなみに、CNNは党派性を主張できずに、宙ぶらりんの状態になって、今ではMSNBCの方が支持されている、と記事では指摘している。

● (英語圏の)グローバル・オーディエンスによる変質
イギリスのThe Guardianのサイトは、イギリスに限らず、世界(の一部である英語圏)の中で、リベラル的判断を行うニュースサイトとして読者に位置づけられている。また、The Daily Mailは世界中のセレブリティを扱うサイトとして認知されてきた。いずれも、国境を越えたアクセスの中で位置づけが変わってきたということ。

この他にも、BBCが実質的にWired Serviceに乗り出して、ReutersやAPと競合し始めているとか、FTやWSJが広告市場の冷え込みから、ニュースの深度に応じてマイクロペインメントを試みるとか、が記されている。

全体のトーンとしては、従来の「パッケージ」は通用しない、読者の関心の深度に応じて内容を変えないといけない(支払い方法もあわせて変えるべき)、ということで、ざっくりいえば、報道としては「高級紙」「大衆紙」をきちんとわけて対処せよ、ということのようだ(この点は、高級紙と大衆紙とが幸せな結合を果たして「全国紙」というカテゴリーを作ってきた日本の場合は、選択がどっちつかずになりがちなところかもしれない。)

なお、ジャーナリズムが「絶滅に瀕した種(endangered species)」である、と形容したのは、上院の小委員会委員長を務めた、ジョン・F・ケリー議員(デモクラット、マサチューセッツ州選出)。いわずもがなだが、2004年のデモクラットの大統領候補だった人物。彼は、ベトナム帰還兵としてグラスルーツの反戦運動を展開する中で、活動家から政治家への道を歩んだ。その過程で、デモクラシーにおけるコミュニケーションの重要性、そのためにジャーナリズムの果たす役割、を身を以て経験した人物だ。その彼が「絶滅に瀕した」という時の含意は、やはり重いものだと思う。