FERMAT communications visionary

July 14, 2009

op-ed / commentary


author
junichi ikeda

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McGraw-Hill、BusinessWeekを売却へ?

July 14, 2009

op-ed / commentary


author
junichi ikeda

大手出版社のMcGraw-Hillが傘下のBusinessWeekを売却する方向で、メディア業界専門投資銀行であるEvercoreと検討に入ったという。

BusinessWeek Is Said to Be on the Block
【New York Times: July 13, 2009】

McGraw-Hill Looks to Sell BusinessWeek
【Wall Street Journal: July 13, 2009】

広告収入の減少により、事業としてグループ内に維持するのが厳しくなってきたというのが主な理由のようだ。

McGraw-Hillグループの収益を現在支えているのは金融格付会社であるS&P。これに、主に教育向けの出版部門が続いている(確かに、大学の教科書や専門書としてMcGraw-Hillのものをよく見かける)。

*

驚くのは、ビジネス関連の雑誌まで出版事業として将来を危ぶまれるようになってきたこと。

記事中にもある通り、確かにBusiness 2.0やPortfolioが休刊(≒廃刊)になっていたが、前者は主にベンチャーを扱う雑誌だったし、後者はCondé Nast的なビジュアル重視の新刊ビジネス誌だったので、いずれもビジネス誌の中ではニッチなものだった。

これらに比べれば、BusinessWeekは伝統あるビジネス誌というのが一般的な受け止められ方である分、売却検討という動きの意味はビジネス誌関係者の間では大きいと思う。

加えて、広い意味でジャーナリズム事業は単体で収益化させにくいという印象をさらに強めるのではないだろうか。

今回のMcGraw-HillとBusinessWeekの関係のように、グループ持株会社の下に報道・出版事業がある場合、持株会社の収益は、報道・出版事業以外からの収益で支えられるケースはわりとよくみられるようになっている。いわば報道・出版事業そのものは、有名だが収益はでないものになってきているわけだ。

Washington Postもグループ(Washington Post Company)の収益は、アメリカの大学・大学院入試のための予備校事業であるKaplanに支えられている(Kaplanは日本でも留学予備校として事業を行っている)。Kaplanの貢献度は年々上がっているという。

そうすると、こうした持株会社下にある報道・出版事業の場合、ある日突然、事業そのものの見直しが検討されたり、最悪の場合、事業が打ち切られる可能性も出てきているということだ。グループ内の他事業からの補填がなければグループ全体としては収益が合わない事態に陥っている、ということでもある。

一般誌に比べれば堅調と見られてきたビジネス誌、その中でも老舗格のBusinessWeekで今回のような話が出てきたことの含意は思いの外大きいと思う。

McGraw-Hillは金融格付と教育、Washington Postは教育、という、それぞれが収益を上げている部門の性格を考えるならば、そもそも「情報=書かれたもの=広い意味でのテキスト」として経済価値があって市場交換にのりやすいものの性格が、つまり「市場交換可能な情報財の要件」が、インターネット化が広く進んだ現代では、どうやら変わってしまったのではないか。

こんな具合に、視点を一段高くして考えることもできるように思う。

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