FERMAT communications visionary

November 24, 2009

op-ed / commentary


author
junichi ikeda

print


  tweet


Murdoch、Bingと組む?: News Corp.とMicrosoftによるインターネットの再区画整理

November 24, 2009

op-ed / commentary


author
junichi ikeda

前々からネットの中では噂されていたことだけど、Googleのindexingを外す(de-indexing)予定の、Murdoch率いるNews Corp.系のニュースサイトが、かわりに、MicrosoftのサーチエンジンであるBingによってindexingを受け入れる(re-indexing)方向で検討中ということのようだ。

Microsoft, News Corp. In Early Talks On Web Deal
【Wall Street Journal: November 24, 2009】

News Corp. Weighs an Exclusive Alliance With Bing
【New York Times: November 24, 2009】

これは、様々な意味で、既存のメディアビジネスモデルがインターネットの世界に本格的に導入される第一歩になる可能性が高い。

というのも、News Corp.とMicrosoftの間ではre-indexingのDeal締結に当たって、両者の間で契約金のようなものが設定されるようだから。

いわば、indexingという「媒体枠」の販売権を、News Corp.がMicrosoftに独占的に売るようなものなので、感覚的には、従来の(テレビや新聞の)広告枠扱いにおける「買い切り」に近い。

同時に、このMicrosoftによる買付は、相応のプレミアムを払うようだし、少なくとも現時点では、Microsoftからすると、これは投資案件になる。つまり、News Corp.のindexingによって、Bingの広告収入を増やせるかどうか、で、様子が変わってくる。

あるいは、広い意味で、このMicrosoftの行為は、インターネットにおけるメディア系サイトに対するスポンサーシップの提供に見えなくもない。

(さらにいえば、上のNYTの記事で指摘があるとおり、これは、インターネットにケーブルテレビ型のクローズドモデルを導入することになる、という見方もできる)。

いずれにしても、この動きは、サーチエンジンビジネスの本質が、広告枠はめ込みビジネスであることを改めて明らかにしていると思う。

これは、直感的には、電通が創業初期に行ったスキームに近いと思う。あるいは、確かフランスのHavasが行ったものにも(鹿島茂の著作にそうした話があったと思う)。

それは何かというと、電通はもともと通信社としてスタートし、地方紙に記事配信をしていた(この通信社部門が、現在の、共同通信、ならびに、時事通信)。そのうち、物理的な新聞のスペースを買い切って、そこに、記事と広告をセットで配信するようになった。これは、新聞社にとっても広告会社にとってもメリットがある話で、新聞社からすれば、一定量の記事を書くためのコストをかけずに済む一方で、安定した広告収入が保証される。広告会社からすれば、全国各地の新聞紙に広告枠を予め持つことができるので、セールスの幅が拡がる。もちろん、広告会社の側は、全ての広告枠を埋めきれない場合、損をかぶることになる。だから、その損を最悪かぶっても資金の流れを滞らせないだけの手元資金の余裕のある会社しか、この競争には参加できなくなる。その意味で、リスクはあるが参入障壁にもなる。

このスキームと似たものを今回のNews Corp. – MicrosoftのDealに感じる。検索対象となりやすい記事のindexingを排他的に持つという事実が、サーチエンジンとしてBingをGoogleよりも利用する誘引としてユーザーに働くことになれば、その分、Bingの検索件数は増加し、その分、検索連動広告を掲載し実際にクリックしてもらえる機会は増える。そう言うシナリオ。

以前の新聞の場合と異なるのは、indexingが直接的な広告枠になるのではなく、あくまでも総体としての検索総数増加の誘引になるかどうか、というところ。その意味で、資金力という力業を振るうことのできる(そしてソフトウェア開発力のある)Microsoftにしか結べないDealであるように思うし、GoogleとMicrosoftとの間で競争があればこそ、起こりうるシナリオだ。

ただ、気になるのは、これが、いわゆる「新聞の危機」に対する解決になっているのかどうか。

図式的にみれば、これはNews Corp.がMicrosoftという篤志家を見つけてきたようなもので、新聞的なコンテント、要するに記事や、記事の編集物である新聞が今後どのようにプライシングされるのか、という点については、結局、手つかずのままだ。

だから、News Corp.が短期的に収益を上げるためには有効かもしれないが、どこかでMicrosoftが撤退ということが起こればそれまでのことでしかない。それに、News Corp.のようにBingへの利用頻度向上への貢献ができそうなサイトを持っている会社はいいかもしれないが(上の記事では国際的通信社であるAssociated Pressが挙げられている)、そうでない弱小新聞社はおそらくこのスキームには乗れないだろう。

それに、検索総数に貢献するような記事、というのがどういう性格のものになるのか、というのも気になるところ。もっぱら大衆紙が多く、なかば扇情的な見出しや記事を書くNews Corp.系の新聞のトーン&マナーがウェブに増えていく、ということなのかもしれない。それは、多分、ウェブ上の「書きもの」のありようにも大なり小なり影響を与えることになるかもしれない。

結局、この“Bing bable”とでもいうべき臨時収入をどこまでアテにできるのか、が気になるところ。単に、ニュースサイトという不動産のプチバブルを起こしているだけ、と見えなくもないからだ。

いずれにしても、このスキームから持続性のあるビジネスモデルが生まれるのかどうか、注視していきたい。また、この動きに対するカウンターとしてGoogleがどう動くのか、あるいは、対Murdochで、他の新聞社やニュースサイトがどう動くのかも気にかけてみたい。

この手のスキームは、最初にパートナーになったところにその分のプレミアムが支払われるのがビジネスの常道なので、後続のメディア企業がMicrosoftにどのように扱われるのかも気になるところだ。

それにしても、資金力のある会社は辣腕を振るうような戦略を行うことができるので、単純に驚かされる。

さて、NYTの記事の最後にあるように、この動きがむしろGoogleの特徴を際だたせることになるのだろうか。

blog categories

all categories...

magazine / web
articles

more...

books

more...

information

FERMATは、コミュニケーションという社会の基底を与える領域の変化の徴候に照準しながら、未来のビジョンを描くことで、新たな何か=“X”、の誕生を促します。

more...