FERMAT communications visionary

November 25, 2009

op-ed / commentary


author
junichi ikeda

print


  tweet


Facebook、IPOへの秒読み開始か?: Class-B株とユーザー志向のWeb 2.0企業文化

November 25, 2009

op-ed / commentary


author
junichi ikeda

FacebookがIPOへの準備をし始めたのではないか、と報じられている。

というのも、現在の株主の所有株をClass-B株に変更する手続きと取ったため。

Facebook Will Form 2 Classes of Stock
【New York Times: November 24, 2009】

Facebook Holders Tighten Their Grip
【Wall Street Journal: November 24, 2009】

Class-B株というのは、通常の株式(Class-Aという)に対して10倍の議決権をもつ株式。上場した後も、会社支配を継続したいオーナー企業などでしばしば選択される株式。Class-B株とClass-A株が混在する体制をDual-structureと呼ぶことが多い。

Dual-structureはメディア企業を中心に選択されることが多く、たとえば、NYTの記事にもあるように、New York Times Companyも採用している。また、GoogleもDual-structureを採用している。

Dual-structureとは、株式の持つ二つの性格、すなわち

会社のあげた利益分配(=配当)に対する請求権 (経済的価値)
会社の意思決定(=株主総会)における投票権 (企業統治的価値)

という、二つの性格があることを考慮し、両者の分断を図った措置。

もちろん、Class-AよりもClass-Bの方が議決権が多いので、企業統治の観点から不適切だ、不公平だ、という議論をする学者も多い。

その一方で、株主にしてみれば、安定的に配当を与えてくれるよう、きちんと主要株主がボードメンバーを構成し、ちゃんとしたCEOを雇ってくれればそれでいい、という意見もある。

簡単に言うと、業績がいいときはそれほど問題にはならないが、業績が悪くなり始めたとき、Class-B所有の株主やボードメンバーがどれだけ自己に対して反省的に振る舞えるかに、よるわけだ。

*

IT業界ではGoogleが導入し、いまのところ、なんとか切り盛りできている。FacebookもGoogleの成功にならって、Dual-structureを導入した、ということだと思う。

もっともGoogleの場合は、対外的には、BrinとPageのファウンダー二人と、CEOのEric Schmidtによるトロイカ体制が定着している。

この三人が、様々な意思決定を行っていることを考えると、「3」という数字は重要だと思う。仮に多数決を採用した場合、基本は2対1に分かれるだろうし、案件によっては、三人とも合意の上で、というように制約条件をつければ、まわりからはわかりやすい意思決定になる。

だから、Facebookの場合は、創始者で現CEOのMark Zuckerbergが、Googleのように、Zuckerbergと並び立つ経営トップを呼び込めるかどうか、というのが、Dual-structureの成功の鍵を握っていると思うし、Facebookの噂されるIPO後の経営をうまく回すために必要な処置であるように思っている。

単純に、ワンマン経営でClass-Bというのは難しいだろう、ということで。

個人的には、IT企業でOpenな価値を実現することに関わるような企業(多分、Web 2.o系の企業がそれに当たると思うが)については、Dual-structureの導入はそれほど悪い話ではないと思っている。

IT企業だからその成長にはR&D投資の関連上、資金が必要になることは間違いないのでIPO自体は必要なこと。けれども、その一方で、上場することで、たとえば、単なる資金運用目的の一環として株式を保有する機関投資家が株式を所有することになって、そうした機関投資家からは、「わかりやすし経営戦略」「手がたい経営戦略」「IR的に華々しい経営戦略
」・・・、などが要望される可能性は高い。

だが、そうした平均的な要望をまともにとりあってしまうと、当のIT企業のビジネスカルチャーが極めてつまらないものになってしまう可能性が高い。

メディア企業においてDual-structureが多いというのも、こうした、企業文化の堅持に有効だから。資本のロジックだけでいったら、たとえば、足下の新聞不況で行けば、販売実績の落ちている新聞は迷わず廃刊するか、外部に売却すればいい、という声が高まる可能性はある。ただ、メディア財、というのはそういうものではない、という意見も一方である。

だから、利益目的で株式を持つのではなく、その企業活動に賛同するから株式を持つ、という人がいてもおかしくなく、NYTなどは、そういう株主もいた。

もっとも、これは、小さな機関投資家並に資産運用をする必要があるほど資産を持つ個人・ファミリーが存在すればこそ、可能なスキームでもある。

GoogleがDual-structureを採用したのも、資金は欲しいが、企業文化は堅持したい、ということがあったから。

特に、Web 2.0系の企業は、基本的にユーザーの支持があって、ユーザーが集ってくれるから初めて事業としての価値をもつ、というような企業が多い。そういう会社では、株主の声と同じくらい、ユーザーの声にも耳を傾ける必要がある。株主は事業の元手を出してくれたのに対して、ユーザーの利用実績は日々のキャッシュフローの源泉になるからだ。

そして、Web 2.0系の企業は、ユーザーのエモーショナルな帰属感が全てであったりすることが多い。

ということで、SNS最大手のFacebookからすれば、IPO後も、そのFacebook文化が堅持できるような、企業統治のパワーバランスを予め用意することが必要になるわけで、Dual-structureはそのための方策だと位置づけることができるだろう。

とはいえ、ユーザー登録数が既に日本の人口を超えているようなサイトが、つまり、一国の国民よりも多いユーザーを抱えているようなサイトを、Zuckerberg皇帝一人だけで切り盛りするというのはリスクが伴うのは間違いない。

首尾よくFacebookがIPOしたとして、それ以後、Googleのようにファウンダーが居続ける企業になるのか、それとも、アメリカのYahoo!のようにファウンダーの振る舞いにノーが突きつけられるような企業になるのか、ひとえに、Zuckerbergの(25歳ながらも)老獪さによるのだろう。

SNSビジネスは、本当の意味でビジネスにたりうるのか、識者によっても判断は分かれる。MurdochのMySpaceはそうそうにエンタメサイトに方向性を変えた。昨日のエントリーのように、News Corp.がBingと組むのなら、MySpaceもその対象になるかもしれない。

以前のエントリーで書いたように、FacebookはGoogleをライバル視している。できれば、実際に両者がビジネス開発で競う様を見てみたい。

そのためにも、まだ噂レベルではあるものの、FacebookのIPOには期待したい。

blog categories

all categories...

magazine / web
articles

more...

books

more...

information

FERMATは、コミュニケーションという社会の基底を与える領域の変化の徴候に照準しながら、未来のビジョンを描くことで、新たな何か=“X”、の誕生を促します。

more...