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November 26, 2009

op-ed / commentary


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junichi ikeda

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WebへのOld Media Modelの移植は、反トラスト法違反を引き起こすのか?

November 26, 2009

op-ed / commentary


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junichi ikeda

アメリカのメディアコングロマリットは、ここのところ、既存のビジネスをいかに傷つけずにウェブの世界に進出するか腐心しているのだが、そのいくつかの試みには、反トラスト法違反の可能性がつきまとうようだ。

まず、先日伝えた、Google外しを行いBingとの独占検索権?のディールを結ぼうとしているMurdochについて。

News Corp.'s Challenge to Google
【BusinessWeek: November 25, 2009】

この記事によれば、独占権の付与は、消費者のサーチエンジンの選択に制限をつけることになるので、反トラス法違反になるというもの。「消費者の選択機会に故意に制限をつける」という点で、実質的に消費者の選択の自由を損ねる可能性がある、ということ。

もう一つは、Huluが有料化への移行を考えている、と伝える次の記事に関わる。

Hulu's Tough Choices
【BusinessWeek: November 24, 2009】

この記事によれば、Huluへのアクセスは、ケーブルや衛星放送への契約者に限られる仕組みが導入される可能性が高い、ということ。いわゆる“TV everywhere”という計画、つまり、従来のテレビ画面で見られていたテレビ映像を、ウェブやケータイなど様々なガジェットでも見られるようにしていこうとする計画に、Hulu自体が組み込まれてしまう可能性が高い、ということ。Huluは、従来のテレビ映像の、ウェブでの単なる露出先になってしまうわけだ。見方を変えると、これは、ケーブルや衛星放送のベーシックサービスに加入しないと、有料チャンネルやPPVが利用できない、という構造に近い。つまり、Huluを特殊なケーブル上の有料チャンネルにする、というのに近い。

これは、ウェブ上のサービスが、ケーブルや衛星放送との抱き合わせ販売になり、ウェブ上でのビデオサービスの競争を損ねる、という点で、反トラス法違反の対象になるように思える。Huluが有料化するにしても、Huluのみで契約できる仕組みが導入されるべきところだが、Huluの出資者が、News Corp.とNBC Universalで、NBCU自体が目下のところ、Comcastに買収されそうな状況にあることを考えると、上のTV everywhere的なアクセス制限が導入されるのはあり得ないことではない。

だから、司法省の反トラスト局なりFTCが、反トラスト法の観点から、物言いをつけてくる可能性はある。

前のエントリーで書いたように、Huluは、Amazon出身のCEOであるJason Kilarによって、Amazon流の、ユーザーの利便性を高めることを第一にした、ビデオのデスティネーション・サイトを目指して運営されてきた。

もしも、上のような形で有料化されれば、これは、サービスとしては、内容を一新どころではなく、180度異なる方向に向かうといってもいいと思う。

記事中にあるように、ウェブ上でポピュラリティの上昇を第一にしたいディズニーはHuluの無料化を望んでいて、もちろん、Huluの株主の間でも姿勢は揺れている、ということだ。ディズニーの場合は、ビジネスの中核に、ディズニーキャラクターのマーチャンダイジングもあって、ビデオ番組は、いわばそのための宣伝素材のようなものなので、無料のフリーアクセスを堅持したいとのだと想像される(このあたりは、角川書店などが、関係するマーチャンダイジング企業とともにスポンサーになって、アニメを放送しているのに近い。無料放送は、各種グッズやDVDを買ってもらうための宣伝機会に当たるわけだ)。

MurdochにしてもHuluにしても、ディールが公にされないことには、当局は動き出さないので、その時まではとりあえず静観するしかない。

しかし、どちらにしても、ウェブ上でのメディアビジネスに大きな影響を与えるし、インターネット的なフリー文化と真っ向対立する方向でもあるので、今後も注視していくつもり。

*

しかし、Huluの有料化がこういう形になるのは避けて欲しいところだ。

HuluはIPアドレスでアクセス拒否をするので、日本からはアクセスできない。アメリカのテレビをアメリカの感覚で見たいと常々思っているので、契約して視聴料を払えば日本でも見られる、というのであれば、実は有料化は歓迎したいと思っていたのだが、どうやらそうはなりそうもない、ということのようだ。

単純に、WSJを契約したら、世界中のどこにいようとリアルタイムでWSJの記事を読めるような形に、Huluもなるのだとばかり思っていたのだが。

上のフレームだと、映像についてはウェブになっても、どうやらDVD同様、Region Codeで露出機会を制限していくようで、とても残念。

それは各国の放送局に放映権を売った方がいいとか、DVDで売った方がいいという、サプライサイドのロジックなんだろうな、と思ってしまう。

先日のGoogle Booksもそうだが、どうも、ここのところのウェブでのメディア系サービスの動きは、国境、もしくは、言語圏や文化圏を意識したものになりつつあるようで、残念に思うことが多い。

Kindleも日本で利用できるし、WSJも日本で契約できるのだから、対価を払ったら地域性は関係ないサービスに是非ともして欲しいところなのだが。

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