FERMAT communications visionary

December 04, 2009

op-ed / commentary


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junichi ikeda

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ComcastのNBCU獲得は、アメリカ情報通信政策の改変を引き起こすか。

December 04, 2009

op-ed / commentary


author
junichi ikeda

ComcastがNBCU株の51%を所有することで、ComcastとGEとの間での合意が成立した。残りの49%はGEが所有する。

Comcast, GE Strike Deal; Vivendi to Sell NBC Stake
【Wall Street Journal: December 3, 2009】

In Secret Meetings, Comcast Wooed G.E. and Won NBC
【New York Times: December 2, 2009】

Cable guys gain little from merging
【Financial Times: December 2, 2009】

Merger plans for Comcast, NBC ignite battle over television access
【Washington Post: December 4, 2009】

Comcastは以前にもDisneyを傘下におさめようとして失敗したことがあるので、ようやく映像コンテント掌握という悲願が達成されたことになる

日本とアメリカでは全くメディア産業の構造が違うから比喩はほとんど意味がないのだけど、本当に「あえて」でいえば、スカパーが日テレやフジテレビを傘下におさめる感じだろうか。

ComcastとNBCUの行っている事業をざっと書きだしてみるだけでも次のようになる:

Comcast
ケーブル
ISP(ブロードバンド)
電話
ケーブルネットワーク

NBCU
NBC
NBC直営テレビ局
Universal Studio
ケーブルネットワーク: CNBC、MSNBC、Bravo、等
Hulu


もともとトリプルプレイ(ケーブルテレビ、インターネット接続、電話)をComcastが行っていたところに、NBCUの放送事業と映画製作事業が加わる。基本的には、利用できる映像コンテント資源が破格に増えることになる。

今、アメリカの成長分野であるSmartphoneにつながる無線電話事業はないものの、NBCUには直営テレビ局=放送施設、もあるので、この先、ワイヤレス事業にも進出、という可能性も十分ある。

なにより、Comcastの考える、TV anywhere計画では、ケーブルに契約したら、全ての映像視聴メディアでケーブルで放送されている映像が視聴できることになる。つまり、PCでもSmartphoneでも、あるいは、他のこれから登場する映像デバイスでも。

そうした映像コンテントのアクセス権のゲートウェイが、ケーブルテレビであるComcastへの加入、ということになる。裏返せば、Comcastのケーブルテレビに加入しない限り、他の映像メディアへのアクセスもできなくなる。

*

このような「ゲートウェイ支配」を認めたくない人びとや活動団体はアメリカには多数あって、既に、政治的圧力を、今回のDealの承認を行うFCCや反トラスト当局(DOJやFTC)、さらには、連邦議会の上院・下院に、働きかける体制に入っている。

もちろん、このような圧力がなくても、今回のDealは上述のように連邦政府関連機関からの承認が必要で、その承認には最低でも一年から一年半近くかかると見る向きが多い。

(上のWashington Postの記事は、こうした連邦政府の視点から報告されている)。

確かに、このDealは、いわば、インターネット以前の、オールドメディア大集合、という感じもなくはないので、審査にあたっても、将来のマーケットへの影響を考慮せずにはいられない。だが、その将来のマーケットのイメージそのものが、今後、オバマ政権下のFCCで描かれていくものでもある。

そのため、承認過程そのものが、アメリカの新たなcommunications policy(アメリカでは放送やケーブルまで含めてcommunications industryと呼ぶことが多い)の立案過程、つまり、政策過程に転じてしまう可能性をはらんでいる。

ざっと考えただけでも、

Ownership Rule (所有規制)
Net-Neutrality Rule (ネット中立性)
Privacy Rule (プライバシー)

あたりは既存の枠の中でも浮上しそうだし、この他にも、

MVPD competition (ビデオ配信プラットフォーム間競争)
Wireless vs Wired broadband competition (ブロードバンド網整備競争)

が、今後の振興策との絡みで課題になっていきそうに思える。

「所有規制」については、過去30年間あまり継続して緩和の方向できたわけだが、それをデモクラット優位の政治状況下で、再度、規制をする方向に舵を切るのかどうか。

たとえば、2004年にあった所有規制の緩和については、Murdoch傘下のFoxがGOP支持を堅持することで最終的に緩和を勝ち取ったわけだが、当時も、徹底的な反対活動が、主に「言論の自由」「政治活動の自由」を抑圧することを理由に繰り広げられた。当時興味深かったのは、右も左も関係なく反対を示したこと。人びとへの大量同時コミュニケーションを可能とするマスメディアを、少数の人物が独占するのは決していい結果をもたらさない、という点で、左右の立場の違いを越えて反対活動が行われたわけだが、それでもGOP優位のアメリカ政府は緩和を認めた。

こうした「緩和」の流れをせき止めるような動きが生じるのかどうか。

また、Net-Neutralityについては、既にComcastはFCCと係争中でもあるため、今回のDealによって、たとえば、Huluのビデオ映像配信を優先するような措置を、Comcastのブロードバンド網で行う、というようなことが起こらないとは限らない。

Net-Neutralityについては、このように、まだルールとして確立されているものでもないので、FCCとしてルール整備に励む一方、連邦議会でもFCCにインターネットやブロードバンドを扱う権限があることを明確にすべく、法律作成に着手する可能性もある。

ただ、そうした法案が来年の中間選挙までの間に作成され成立するかというと疑問に思うところもある。

裏返すと、そうした日程も含めて、今のタイミングでDealの発表に踏み切ったのかもしれない。

今のFCCは、親IT、親Silicon Valleyで、親app bizなので、Comcastを含めて有線のインターネット接続事業については公共インフラ事業として再定義しようとする動きがある。インフラ事業になれば、収入的には安定はするものの、規制が増え、成長は難しくなる。

ComcastがNBCUに関心を持ったのも、こうした動きの中で、非インフラ部門の企業資産を持つようにしないと、次の手が打てなくなる、と踏んだからだと思われる。

いずれにしても、今回のDealについては、しばらくはいろいろと議論が交わされると思うので、communications policyへの影響、という点も含めて、気をつけていきたい。

しかし、最も気になるのは、いまやリベラル=デモクラット支持のニュースチャンネルとしての地位を確立してしまったMSNBCは、今後もその姿勢を堅持できるのか。

あるいは、Bravoは、NYを舞台にしたリアリティ系の番組を継続できるのか。

身近なところで、コンテントレベルでの、制作方針・編集方針への影響が最も気になるところではある。

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