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December 16, 2009

op-ed / commentary


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junichi ikeda

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《マクドナルド化》を更新するマクドナルド: Free Wi-Fiで“hang-out destination”を目指す

December 16, 2009

op-ed / commentary


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junichi ikeda

Hang-out destination というのは、「ぶらぶらする場所」とか「たまり場」とかいう感じの表現。ハンバーガーチェーンのマクドナルドが、今まで有料だった店内でのWi-Fiの利用を無料にして、顧客の呼び込みを図る施策を来年から始めるという。

McDonald's to Offer Free Wireless Internet
【Wall Street Journa: Decemeber 15, 2009】

飲食のチェーン店でのWi-Fiの利用は随分前からあって、たとえば、私が留学している頃でもスタバはWi-Fi利用が可能で、パソコン持ち込みの学生が何時間も粘って課題に取り組んでいる場面をよく見かけた。

だから、今回のマクドナルドの施策もあまり目新しいものではない。

それでも、気になる点は二つほどある。

一つは、このWi-Fi無料化が、要するに「マクドナルドのスタバ化」という最終ゴールに向けた、ブリッジのような策ではないか、ということ。

Hang-out destinationというのは、要するに、だらだらと店舗に長居してもらうことをめざしているわけで、記事中にもあるように、メニューとしてもスムージーやフラッペを用意しているくらい。

食事時に限らず顧客がマクドナルドに寄りついてもらうことで、次なるビジネスチャンスを考える、ということなのだろうが、それこそ、ドライブスルーのようにハンバーガーを買ったら店舗は「スルー」するようにしてきたマクドナルドからすれば、顧客から見たときの店舗イメージを180度変えることになるわけだから、その実現は容易ではない。なにしろ、客の回転数を上げるために、硬いプラスティックの椅子を用意していたくらいだから。

ということで、その店舗イメージを変えていくための「移行策」といてWi-Fiを利用しようということなのだろう。

ただ、もしもこれが首尾よく成功を納めようものなら、他のチェーン店もWi-Fi無料化という流れに追随することもあり得るわけで、全体として、Wi-Fiの利用が進むことになる可能性も出てくる。

気になる点のもう一つは、以前と違って、今はWi-Fiを利用するのがSmartphoneユーザーでもある、ということ。

PCでの利用ではなくて、たとえばiPhoneや、今後出てくるGoogle Phone(Nexus One)などを利用するユーザーもでてくる、ということ。

ここで、3GとWi-Fiのデュアル仕様が生きてくることになる。

PC利用者とは異なる利用が、店舗に滞留しながら行われるわけで、このあたりは、今後、いろいろとアイデアを出せるところになると思う。

ということで、app storeの充実にもつながることだろう。

*

それにしても、マクドナルドが、デスティネーションを希望する、というのも、時代が変わったことを感じさせる。

なんといっても、マクドナルドといえば《マクドナルド化》の範例だから。

ここでいう、《マクドナルド化》というのは、マクドナルドの営業方法に範をとった、「合理的な商業施設の運営手法」の総体のこと。

ジョージ・リッツァの『マクドナルド化する社会』の《マクドナルド化》。

それは、商品の開発、その配送、店舗の作り方、接客方法、というように、マクドナルドの営業活動の全ての場面を貫く「合理主義」的計画性を指していたもの。上で記した「硬いプラスティックの椅子」のように営業活動の隅々まで「設計」がなされていた(「環境管理型権力」に連なる設計思想)。

それが、一転して顧客の滞留と、それによるビジネスチャンスの獲得、という、ゆるい方向に向かうわけだから、マクドナルドをとりまく競争環境が、大きく変わったことの現れなのだろう(もちろん、最大の仮想的はStarbucks)。

ちょうど、日本のコンビニが、気がつけば流通業界の中で一人勝ち状態になり、その結果、コンビニ間競争をどう勝ち残るか、が主要な課題になり、ついには、コンビニの中で、客層によって、店舗イメージを変えたり、サブブランド(「ローソン」に対する「ナチュラル・ローソン」のようなもの)を作ったりして、多様化している状況に近い。

コンビニが先導した情報武装されたロジスティックスはもはや大手の流通・小売では当たり前になり、その存在を前提にした上で、ユーザーの獲得合戦に乗り出している。

それと似たような動きが、アメリカの場合は、ユーザーに近いチェーン店という意味で、マクドナルドのようなファスト・フード業界で起こり始めたということ。

(補足しておくと、アメリカでは日本的なコンビニは見かけない。情報武装されたロジスティックスを活用するのは、Wal-MartやTargetのような巨大スーパー。一方、日本のコンビニに相当するものは、ドラッグストアを除けば、パパママストア的なものがまだ残っている。自営の小売業は、雇用吸収の点でも維持されている感じ。

そういう意味では、そもそも、日本のように自販機が路上に点在するようなことがなく、たとえば、マンハッタンであれば、屋台に相当するバンによる路上販売が多数ある。コーヒーやサンドイッチ、ベーグルやマフィンなどが売られていて、聞いた話では、それらバンの運営をサポートする、胴元のような会社というか団体というか組織のようなものが、ブルックリンやクイーンズにある、ということだった。)

いうまでもなく、巨大チェーン展開している企業の方針変更は、最終的には個々の店のイメージチェンジにまでつながるので、結果的に、一つ一つの街の「風景」をも変えていくことになる。

記事にあるように、全米に14,000あるマクドナルドの店のうち、11,000店でWi-Fi利用が可能になるという。

そのことの影響力はやはり侮れないと思う。

こうやって少しずつ生活空間が変わっていくわけだ。

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