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February 02, 2010

op-ed / commentary


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junichi ikeda

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コンサルと大学と出版の融合

February 02, 2010

op-ed / commentary


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junichi ikeda

ビジネススクールがコンサル・ファームや広告会社の代わりに、ブランディングなどの企業の課題に応える役割を果たすようになってきた、と伝えるWSJの記事。

The Campus Consultant
【Wall Street Journal:January 21, 2010】

主に「コスト」と「客観性の担保」の二点から、ビジネススクールが選択されているという。コストの点では端的にコンサルよりも安いから。客観性の担保の点では、アカデミックに多数の事例も含めてビジネススクールは研究しているから。

記事でも説明されているとおり、コンサルもBスクールもそのスタッフが持つスキルは大して変わらない。軸足がどこにあるか、ということぐらい。

コンサルは、ビジネスの現場にいながら、アカデミックな知識の現場への応用について知恵を巡らず。一方、Bスクールの教員は、一歩引いて個々のビジネスよりも産業レベルで俯瞰しながら、個別の企業の実践知を汎用性の高い知識に変えていく。

これが、従来の役割分担=棲み分けだったのだが、その境界が曖昧になってきている。

コンサルの側では、大きなテーマに関してオリジナルの知識蓄積をすべく研究所をつくったり、現場の知識の集約をするために、オリジナルのレビュー誌を出版してアイデアの専有性、先行性を主張する。

Bスクールの側は、逆に、今回のようにコンサル業務を、中間管理職以上の教育(mid-career program)を通じてできた人脈に基づきながら、担っていく。

もっとも、人材交流という点では、既に、コンサルフォームのコンサルタントや投資銀行のアナリストがBスクールなどの教員を兼任することあるし、一方、大学教授がコンサルのアドバイザーになることもある。

このように、人材交流が以前から起こっていたことを踏まえれば、上の記事のような事態は起こるべくして起こっていることといえる。

つまり、知識提供、知識援助事業として、教育、コンサル(もしくはシンクタンク)、そして、出版、というのは、原材料としては同じ(もしくは類似の)知識を、その利用者に応じて、使い分けていたに過ぎない。

だから、全ての知識がWebにあがり、知識加工のプロセスであるコミュニケーションがほぼ全てWebで行われる、Web-centricの時代には、必然的に、教育、コンサル、出版、は渾然一体となっていく。

出版についての片鱗は、例えば、Scientific AmericanやMIT Technology Reviewのような科学系の雑誌を中心に既に起こり始めている。読者共同体の多くがSNSやTwitterでWebに乗ってきているため、知識交換はWebで行われるのが当たり前。

そういうダイナミックな動きに乗り出すため、これもまたなかば必然的にWeb Publishingとしてサイトが進化していく。単に雑誌誌面が記事として(前田塁の言葉でいえば)「固着」したままサイトに上げられるわけではなく、外部リンクの可能性や、先行記事との参照など、複数の知識化のプロセスに開かれた形でアップされる。

そうした開かれた知識の提供者の一人として、コンサルやアカデミックが登場する。

Publishingという言葉は、その原義は、公にする、ということ。対して、出版、というのは(印刷のための)「版」と関わりが自明視された言葉。だから、出版ではなく、Publishingの方で考えれば、コンサルの情報提供も、アカデミシャンの講演なども、すべてPublishingになる。

このように考えれば、コンサル、教育、出版、は同一平面上にある活動だということが理解しやすくなると思う。

さらにもう一段進めば、知識供給者としての企業、が浮上する。これは、たとえば、建築の分野で先行して起こったことで、日本ならば、INAXやTotoのような企業が、建築物全体に関する構想について、Publishingしている。

だから、上の記事で示されていることについては、この段階で驚いてしまうのではなく、むしろ、この先はどうなるのか、どうしたいのか、という方に頭を巡らした方が生産的だし精神的にも健全なことだと思う。

実務(ビジネス)を中心に、教育、コンサル、出版、は一度融合し、その後ユーザーの要請に即した形で再構造化される。そのシナリオを考えてみることは頭の体操になる。

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