FERMAT communications visionary

March 01, 2010

op-ed / commentary


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junichi ikeda

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「Twitterは誘惑する」

March 01, 2010

op-ed / commentary


author
junichi ikeda

「Twitterは稼げるのか?」

今、最も気になるタイトルの特集記事を見つけた。

Can Twitter Make Money?
【MIT Technology Review: Feburuary 23, 2010】

とはいえ、記事を最後まで読んでも肝心の回答、つまり、Twitterは稼げるのかどうか、について明確なYes/Noは与えられていない。

先日公表されたように、目下のところは、GoogleならびにMicrosoft (Bing)との間で、全てのTweetsのリアルタイムフィードを提供する契約を結び、その契約料として、伝えられるところによれば、二社合計で2500万ドル(約25億円程度)を得た。これがTwitterにとって初めての売上であった。

この契約についての判断は微妙だ。リアルタイムフィードから利益を直接生み出す方策については、さしあたって外部化してしまったことになるからだ。ただし、GoogleとMicrosoftの双方への提供契約になるので、この二社の間でリアルタイムフィードの活用方法を巡る開発競争が生じることが期待できる。Google、Microsoft、の二社が鎬を削るわけだから期待は嫌が応にでも高まる。

その間、Twitterは更なるユーザーの獲得に専念することになる。それは、Twitter自身の使い勝手の向上、ということになる。だが、ここでも微妙なのはTwitterという会社はmicrobloggingに関する技術を専有していない。あるのは、ブランドとユーザーベースだけ。だから、ある日突然、Twitterに相当するサービスを他社が始めてもそれ自体を防ぐ手だては法的にはない(だから、たとえば、Google Buzzのようなサービスが登場することになる)。

そのこともあってか、むしろ積極的にAPIを公開し、外部のデベロッパーによって、Twitter名で獲得したユーザーたちの利用満足が高まるようなソフトウェアの開発を促している。たとえばTweetDeckやTweetMemeがそれにあたる。あるいは、Bit.lyのように140字の字数制限を有効利用するためのURL短縮サービスのようなサイトも現れる。

だから、本当に突き詰めると、Twitterとはユーザーベースしかない。したがって、ネットワーク外部性を最大限活用して先行者優位を維持すべくユーザーの獲得に専念する。それは、ユーザーにとってのTwitterの利用方法の提案や、そのための利用環境の整備が中心の作業となる。

裏返すと、それくらいTwitterという存在は普遍的なサービスカテゴリーとして位置づけられるポテンシャルがあるサービスだということ。つまり、メールやメッセンジャーのように、商品名がカテゴリー名を代表してしまうようなサービス。つまりは、それが、Twitterのブランド、ということになる。

そして、ブランドに照準するということは、

Twitterは私たちを誘惑するのか?

という問いに帰着することになる。

*

この話題は、数週間前、Twitter上で数人と議論したもの。

その時のやりとりでは、「Twitterは確かに私たちを誘惑する」というもので、写真論やメディア論などを援用し、たとえば、精神分析やバルトなどの立論構成に基づくことで、多分、それらしい論を展開することは可能だろう、ということだった。

この場でその論を展開する余裕はないのだが(実はまだ考案中)、しかし、そこでの主旨は、Twitterという枠組みは、そのタイムラインによるTweetsという単位の情報の流れや、そのephemeral(揮発性の高い)な接触の仕方によってもっぱら「放送」的なコンテントとしてとらえられがちなのだが、その(外部からの)印象に囚われてはいけない、というものだった。

Twitterの特徴は、原則、個々のユーザーはそれぞれ全く別のタイムラインを眺めているところにある。だから、もしも、多くの人びとがTwitterに惹かれてやまない、というような事態が生じるとすれば、それは、そのタイムラインの中に流れ続ける個々のTweet=コンテントに求めるのではなく、そうしたコンテントの流れを生み出すタイムラインやTwitterの形式の方にこそ求めるべきだ、ということだった。

そして、その形式≒枠組を論じるのに、写真のようなむしろ動かない、しかし、フレームとして「現実」を切り取る枠組みが有効なのではないか、というのがTwitterの中で議論していたことだった。

だから、この視点に従えば、Twitterはその形式だけで人びとを魅了していく可能性があるということになる。

もちろん、写真同様、個々に人びとの関心を集める「強いコンテント」としてのTweetsは必要だろう。それは、著名人によるTweetsであったり、あるいは、newsであったり、・・・、ということになる。

ただ、それはTwitterの利便性を増すだけの話。普及の後押しや、Twitter自身のプロモーションにはつながるだろうが、Twitterそのものの魅力の説明にはならない。

*

そういう意味では、Twitter社が発表した、広告を中心にしたマネタイズ案は、Twitter社自身、自分たちの持つ魅力に気付いていないことを露呈させている。

Twitter’s Ad Plan: Copy Google
【All Things Digital: Feburuary 26, 2010】

ここで提案されているのは、基本的にGoogle型の検索型広告。Twitterのユーザーが何らかの検索をした場合、その検索ワードに合わせて広告主のTweetをTLに滑り込ませる、というもの。

検索しないと広告が流れないとか、利用者の属性をどう判断するのか、という論点は上の記事が指摘しているので、そちらを見て欲しい。

だが、これではTwitterの魅力=誘惑する力に気付いていないことになる。

このあたりは、むしろ、従来型の広告会社のクリエイティブに是非とも知恵を絞って欲しいところ。ポイントは滑り込ませ方の部分。

たとえば、上の写真論的分析から考えれば、街頭に張られている写真に基づくポスターにおいて、いかに歩行者の一瞥を得るようにするか、というのと同じ頭の使い方でTLを滑り込ませる方式を考える、ということなのだろう。いや、言っていて全く具体性がないことはわかっているのだが、逆に、具体的なクライアントの具体的な素材にあわせて試行錯誤していくところだと思う。

何が言いたいかというと:

TLの中に「私を見て!」という金切り声的なメッセージや、スパムまがいの奇天烈なメッセージを滑り込ませてもただ単に不快になるだけ。

ウェブの広告については、マイニングやマッチングというテクノロジーで処理できる要素が増えてきて「届けられ方」という点では確かにrelevancy(適合度)は上がっているのだが、その一方でそのメッセージの方は、とりあえず知らせておけばいいでしょ、的なものが数多く見られる。つまり、ビークルの最適化ばかりが行われ、メッセージのありように無頓着になりつつある。

もっといえば、メッセージ=広告表現(通常クリエイティブといわれるもの)が人びとを魅了する、誘惑する、という部分が忘却されつつあるように思える。

この点は、Twitterに限らずウェブ全般で考え直してみてもいい頃合いではないかと思う。それこそ広告費の規模でもインターネットが新聞を抜き、後はテレビとの頂上対決が控えているだけのタイミングでもあるわけだから。

いずれにしても、「魅了」とか「誘惑」というラインでウェブを捉え直す。

そのための出発点として、Twitterはいい機会を与えてくれると思っている。

*****

追記 (03.02.2010)

Twitterの誘惑論については、Twitter上で意見をやりとりした@shionkonoさんと@i_kenさんに多くを負っていることを追記しておきます。お二人ともありがとうございました。

多分、ウェブの登場によって、全般的に表現環境/ツールとしてのウェブが全面に出て、その変化の方がさしあたって「目新しい」ため、目新しさに寄生するのが本筋の広告(by北田暁大『広告の誕生』)としては「ウェブでXXXができます」と言っていればとりあえず「広告らしさ」を保っていられたのだろうが、そのいわばアタッカーの、トリックスターの戦略だけではそろそろ息切れするのではないか、というのが上で記したこと。

同じ問題意識から、最近は、制作環境の話、generativityの話がいささか加速気味になってきているのではないかと思い始めている。技術者が礼賛するのは彼らの仕事や目的がウェブ上の環境整備/改善にあるわけだから当然として、ただ、それを使う側の実作者(アート、デザイン、各種メディア表現など)、あるいは、場の主催者(ウェブ・コミュニティや建築家など)などが、とりあえず人を集めれば何とかなる集合知万歳、となるのには直感的に違和感を感じることが多い。多分、制作や編集の意思決定は実作者や主催者の側が選択する必要があると感じているからだろう。つまり、ある種の表現主義の提案が必要だと感じているということ。

このあたりはかなり深い問題につながっているように感じているので、しばらく温めて考えていきたいし、機会があればその考えをまとめてみたいと思う。

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