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April 20, 2010

op-ed / commentary


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junichi ikeda

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FCC vs 連邦裁判所:インターネット管理の権限の所在を巡る争い

April 20, 2010

op-ed / commentary


author
junichi ikeda

FCC(Federal Communications Commission: 連邦通信委員会))にはインターネットの管理権限はないと、アメリカの連邦裁判所が判決を下した。

The F.C.C. and the Internet
【New York Times: April 18, 2010】

問題の裁判は以前にも紹介した裁判だ。

ケーブル会社大手のComcastが、自社が提供するケーブルインターネットにおいて、インターネットの用途に応じて回線容量の割り当てを制御したのだが、それをFCCがnet neutralityの原則にもとる、という理由でやめさせようとしたもの。

具体的には、Comcastは自社のケーブルインターネットでBitTorrentでダウンロードするユーザーが利用できる容量を制御しようとした。Comcastからすると他のユーザーの容量を圧迫するだけでなく、そうやってダウンロードされるもの(映像や音楽のソフトなどがありえる)によって、ケーブルチャンネルやPPVの解約に繋がる可能性があるため、そうしたユーザーの利用を制御しようとした。

FCCはこうしたComcastの動きをやめさせようと命令を出したわけだが、今回の裁判所の判決によれば、ことの是非はともかく、そもそもFCCにはインターネット利用に対する管轄権がない、したがって命令は無効だ、ということになった。

この「管轄権がない」という判決によって、FCCは過去何回も命令を覆されてきた。裏返すと、電話会社やケーブル会社による法務戦略の常套手段ともいえる。識者によっては、そんなことをしているから、アメリカのインターネットやブロードバンドの配備は他国に対して後塵を拝することになってしまったのだと指摘する人もいるくらい、実に頻繁に起こる。

とはいえ、この状況を放置すると、果ては先日FCCが発表した全米ブロードバンド配備計画(National Broadband Plan)の実現にも赤信号が点る可能性すらあるため、対応は必要になる。FCCとしては、上告はせずに、合法の範囲でComcastの行動を制御しようとするようだ。これもまた法務戦略となる。

一番わかりやすいのは、連邦議会によってFCCにインターネットの管理権限を与える旨立法化してもらうことだが、これは立法措置のための議論を待たねばならないし、加えて最近のGOPの議会の動きを見れば何にでも反対をしかけてくる可能性はある。少なくとも今年の11月の中間選挙を待たないことにはことが進まないだろう。残念ながら、ヘルスケア改革法の立法過程で大荒れに荒れ、かつ、上院で圧倒多数の60議席を失ったデモクラットからすると、優先順位の高い政策案件は他にも多数あるからだ。

したがって、さしあたってはFCCの権限の範囲で命令が出せるようにする方法が検討されることになる。

上のNYTのOp-Ed(論説)にもあるように、その中で一番簡単な方法は、インターネット接続事業を、現状の「高度情報サービス」から電話のような「コモンキャリア」に分類枠を変えてしまうことだ。つまり、インターネット接続事業を、従来のような電話網という物理的な回線の上で、プロトコルによって論理的に実現された「付加価値サービス網」とするのをやめて、インターネット回線そのものを物理的な網と見なし、電話網に対してFCCが持ち続けてきている権限をそのまま当てはめてしまおう、とする手になる。

この手直し的作業がどの程度容易に行えるのかにもよるが、もしもこうした再分類が可能であるならば、逆に、意外とこれはNational Broadband Planを進める上では都合のいい方向になるのかもしれない。

というのも、コモンキャリアとしてインターネット網、あるいはブロードバンド網が、電話並みの基盤通信網として位置づけられれば、ユニバーサルサービスファンドと呼ばれる、電話料金の平準化のための補填ファンドを、ブロードバンド網の整備に活用することもできるようになるからだ。また、net neutralityのような原則も導入が容易になる。その一方で、どこまで電話網で確立された原則がブロードバンドにおいても適用可能であるのか、あるいは、新たな法概念が必要になるのか、検討は必要になると思われる。

そうすると、今回の判決は勝っても負けてもFCCにとっては次の手を打つ上で有効だったということもできる。第一に法整備の必要性が明確になる、第二にFCCルール内でのカテゴリー変更に着手する動機が得られる、第三に仮にそうしたルール変更がさらに法廷で覆されれば(これは大いにあり得る)、いよいよ立法措置に訴えるしかなくなり、ホワイトハウスにしても連邦議会にしても本腰を挙げざるを得なくなる。

このように、本件は、今後のアメリカのブロードバンド整備の方向を占う上で、後から振り返れば、分岐点となった判決となる可能性もあるということだ。引き続き注目していきたい。

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