FERMAT communications visionary

June 02, 2010

op-ed / commentary


author
junichi ikeda

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D8のSteve Jobs

June 02, 2010

op-ed / commentary


author
junichi ikeda

Steve JobsがWall Street Journalのデジタル欄であるAll Things Digital主催のカンファレンスに登場し、最近の一連のAppleの動きについて語った。

Apple's Jobs Takes On Rivals Adobe, Google
【Wall Street Journal: June 2, 2010】

Apple CEO Steve Jobs Live at D8
【All Things Digital: June 1, 2010】

発言のポイントは:

○AdobeのFlashを使わずHTML 5を採用したのはHTML 5が優れていると判断したからでFlashがHTML 5と遜色ない速度を示すようになったら是非見せて欲しいと伝えている、という。

「前に進もうと思ったら適切な馬を選ばないといけない。」「ユーザーもiPadを購入し利用することでAppleの判断を支持してくれている。」とのこと。

○Googleとの関係がぎくしゃくしたのはGoogleがmobile phoneのターフに侵入してきたから。とはいえAppleとしてはGoogleの独壇場である検索市場に出て行くつもりはない、という。

「検索はAppleが知悉する分野ではないし、あまりケアしてこなかった分野だ」とのこと。

○iPhoneの携帯通信パートナーであるAT&Tの接続の悪さについては、AT&Tの企業努力を擁護する一方で、他の無線通信キャリアとのパートナー化の可能性を臭わせた発言をしている。

○iPadによるメディアコンテント(新聞や雑誌)の掲載については、iPadが間に入ることで、電子新聞や電子雑誌として収益化が図れることを強調していた。電子コンテントについては「ブロガーの国」ではなく「編集監督が行き届いた」ものにしたいという。

つまり、玉石混淆の無秩序状態で結果的に収益を生むのが困難な状態にするのではなく、iPadが介入することで質の管理を行い収益化に結びつけることができるという。

この他に時価総額でAppleがMicrosoftを抜いたことについてのコメントもあったようだ。

総じて絶好調のAppleを象徴するような強気な発言が多かった。

*

一点、上のWSJの記事の記述として興味深かったのは「Adobeとの間でPublic Relationsの戦いをしている」という表現の部分。

このPublic Relationsという表現は、しばしば日本語訳として使われる「広報」という言葉よりも、文字どおり「人々の関係性(関係づくり)」という意味で取った方がわかりやすいこと。

つまり、PRと呼ばれるものは、アメリカにおいては、一方的な情報提供になりがちな「広報」ではなく、幾重ものコミュニケーションを「人々」との間で往復してやりとりすることで関係性を築くこと、というぐらいの意味になる。

そして、その対象がPublic=人々であるのは、今のユーザーだけでなく、潜在的なユーザーを含むので「広く一般の人々」が対象になるわけだ。

より多くの人に知らしめて理解を得て、できれば賛同まで得る。

これはもっぱらデータマイニングによって特定のユーザーに対するターゲティングが当たり前になってしまって「広告」と好対照の役割ではないだろうか。不特定多数の人々に到達することを第一の目的とする。

であれば、実は一昔前までに言っていた「マス広告」というのは、これから先はむしろPublic Relationsが担うことになると考えるのはどうだろうか。ただし、そこではマス広告のように商品を伝えればいいわけでない。会社や会社の開発思想を語ることにある。そうした立ち入った会社の知恵や顔を作る機能は、PRを「広報」などと訳してわかったつもりになっている間はおそらくは果たすことができないだろう。

もちろん、このD8カンファレンスのような場にSteve Jobsのような企業トップが現れ肉声でAppleの魅力を語るのも、PRのための重要な表現機会の一つとなる。

だから、ただ単にJobsの受け応え方に痺れているだけではダメなのだ。こうした場でのプレゼンテーションのもつ含意そのものを、上述のように、コミュニケーション戦略=PRの一環としてカウントし評価することこそを私たちは学ぶべきだと思う。

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