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August 04, 2010

op-ed / commentary


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junichi ikeda

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Scott McNealy は Andrew Carnegie の再来か

August 04, 2010

op-ed / commentary


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junichi ikeda

Sun Microsystemsの創始者の一人であるScott G. McNealyが、non-profitの活動に乗り出し、手始めにOpen Source型のデジタル教科書に力を入れている。

$200 Textbook vs. Free. You Do the Math.
【New York Times: July 31, 2010】

OracleがSunを買収することになり、McNealyはCEO職から離れることになった。彼が今、力を入れているのが、無料のテキストブックのハブの役割を果たしているCurrikiというウェブを活用した教育支援プロジェクトだ。

アメリカ全体で年間に80億ドル(約8000億円)から150億ドル(約1兆5000億円)が教科書の購入に当てられているが、これらを全て無料にしてしまえ、というのがMcNealyが考えていることのようだ。なぜなら、「10+10=20」ということは変わらないからだ。

McNealyは初等教育における教科書のことをいっているのだと思うが、個人的に経験した大学の場合、アメリカの教科書は確かに高い。一冊150ドルする位するのが普通で、それが定番となった教科書だと、McNealyも指摘するように比較的短いサイクルで頻繁に改訂される。コロンビア大学では、大学生協が古本としてテキストを買い取り、毎年売っていくということも行っていた。講師は最新版の教科書を指定してくるが、たいていの場合は、二回ほど昔のバージョンでも十分内容的には問題ないことが多い。改訂の多くは事実のup-to-dateなので、理論や考え方の枠組みには影響を与えないからだ。それでも、教科書出版会社、あるいは、ロースクールの判例出版会社などは、ドル箱として頻繁に改訂することで、中古本市場に利用者が逃げるのを防ごうとする。

出版社側の事情は事情でわかるが、しかし、up-to-dateの容易さも含めてウェブで対応すればそうした馬鹿らしいシステムからも逃げ出せるのではないか、というのがMcNealyが考えていることだろう。何故馬鹿らしいかといえば、そのような改訂によって教科書自体が高くなりその分知識習得のための金銭的ハードルが上がってしまい、もともと教科書出版の背後にあった、知識の伝播という目的達成のハードルをも上げてしまうから。

そこで、ウェブを活用して教科書的な知識については広くアクセスできる環境を創ってしまおう、というのがCurrikiで試みようとしていること。こうした知識の伝授機会を増やそうというのは、19世紀末に全米の図書館システムに私財を投入し無料貸し出し制度を確立の貢献したAndrew Carnegieの行為の現代版と言っていいだろう。

あるいは、貧困撲滅などの大義の実現に向けて私財を投じたBill Gatesと比較したとき、McNealyの振る舞いは、各人が自律して対処するための土台=教育に力を入れよう、というところは、よりOpen Source 的というか、リバタリアン的というか、Sunらしさをよく表現しているようで興味深い。

Gatesが財団活動で国際的な正義の実現に力を入れる一方、Steve JobsはiPad等の投入で企業活動そのもので社会を変えようとし、McNealyはSunの起業精神にあったOpen Sourceの発想を社会問題の解決に活用しようとする。三者三様で社会に対峙しているところが興味深い。

McNealyのリバタリアン的傾向については次の記事の中の彼の発言も参考になる。

Scott McNealy on Nonprofits and Bailouts
【New York Times: August 2, 2010】

少なくとも当面は上場企業の経営に携わるつもりもないようだ。間違いなく今日のインターネットの時代を用意した立役者の一人であるMcNealyがnon-profitの世界で何を行っていくのか。GatesやJobsとはまた異なる活動家=adovocateということか。

何にせよ、資金を出して終わり、とならないところがとても起業家的だ。新しい仕組みを作るところに自らhands-onで乗り出していく。今後も注目しておきたい。

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