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December 24, 2010

op-ed / commentary


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junichi ikeda

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ハリウッドは結局のところ技術頼みのビジネスなのか?

December 24, 2010

op-ed / commentary


author
junichi ikeda

2010年のアメリカのクリスマス商戦で、Blu-rayが好調の気運にあるようだ。

Blu-ray's Time Comes as DVDs Fade
【Wall Street Journal: December 24, 2010】

2000年代の初頭からハリウッドメジャーの収益はDVDに大きく依存してきたわけだけど、ここのところ、逆風要因は多かった。、経済低迷、海賊版、低コストレンタル、ストリーミングサービス等がそうした逆風だが、それに対して、Blue-rayが他では見られない魅力を示している、ということだ。

それは確かにハリウッドのビジネス的にはいいことなのだろうが、しかし、本当にそうなのだろうか。

20世紀が映像の世紀と言われて、それは前半は映画、後半はテレビによって大衆化したのだったが、その中心にはハリウッドがあった。ハリウッドの歴史を紐解けば、当初は舞台の演劇の中心だったNYで製作が進められていた映画が、天候に左右されない(ほとんど雨がふらない)、土地が安い、その他の理由でLAに移り、そこで、第二次大戦後の好景気もあって一気に成長したのがハリウッド。

70年代後半から80年代初頭にかけて、映画そのものはテレビ等の他の娯楽に押されて低迷したものの、映画を見て育った世代が製作した映画の登場によって、映画文法的には異なる物語世界が作られ再び浮上した。スピルバーグやルーカスらがそうした世代の筆頭だ。

そして、ケーブルやビデオなどの映像配信機会が拡大することでアメリカ国内での売上を伸ばし、同時に、衛星放送を中心に、世界中にハリウッドの映像をばらまく機会に恵まれ、巨人の地位を築くことになった。しばしば言われるように、80年代はアメリカの映画にとっては拡大の時代だが、その背後に苦虫を噛む欧州の映画、とりわけフランス映画があった時代でもある。

しかし、どうやらそうやって世界の映像ビジネスの勝ち組になったハリウッドは、クリステンセン流のイノベーション理論でいえば、自らを「破壊」することができなくなってしまっているように見える。あまりにも調子よくなってしまったがゆえに、身動きがとれなくなってしまったといっていい。自らのビジネスの均衡点を自力で食い破ることができない。

今日、ハリウッドメジャーは基本的には配給ビジネスであり、映画の企画・制作は外部のプロデューサーならびにプロダクションが中心だ。プロデューサー業にはオスカーをとった俳優も参画している。あるいは、家族層向けの興業ではPixar作品のようなCGを駆使した作品の受けがいい。撮影も安いコストを目指してハリウッド外部の地で行われる。

何が言いたいかというと、「製作」はもはやハリウッドの外で行われているということだ。「アイデア」はメジャーの外からやって来る。ハリウッドは、文字通り、イメージの中で君臨するだけのこと。あるいは、そうしたビジネスを回すための胴元=資金提供源となっている。

そして、ハリウッド自体が行っていることは、DVDや今度のBlu-rayのように、もっぱら過去のアーカイブのフォーマット変換での収益を上げることだ。これは言ってしまえば、曽祖父ぐらいの代から受け継いだ遺産を運用していくような行為でしかない。しかも、その運用手段は、自ら開発したものではなく、外部のメーカーが提案してくるものだ。

イメージを売るビジネスは夢を売るビジネスであり、その夢を描きつづけるからこそ人々の関心を引き寄せ、売上という形での支持票を集めることができる。過去10年でこのことを実現したのは、やはりアップルであり、スティーブ・ジョブズだったということになるのだろう。

もし仮に遺産運用こそがハリウッドの役割になるのだとしたら、その遺産の運用方法の発見や選択こそが彼らにしかできない役割となるのだろう。そのようなメジャーが登場するところに期待したいところだ。でなければ、映画の『インセプション』よろしく、家督の相続者たちの潜在意識の奥底に潜り、家督維持の呪縛を解く魔法をかけてもらうしかない、ということになってしまう。

いずれにせよ、件のBlu-rayの記事は、ハリウッドの自己革新とはどんな形があり得るのかという問を改めて思い出させてくれたのだった。

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