Tina BrownはNewsweekをいかに再生するのか?

March 01, 2011

op-ed / commentary


author
junichi ikeda

Newsweekを買収したDaily Beastが、AtlanticからアルファブロガーであるAndrew Sullivanを引き抜いたという。Sullivanの他にも知名度のあるブロガーやエディター、ライターの獲得にDaily Beastは奔走しているようだ。

Andrew Sullivan Joins Daily Beast and Newsweek
【New York Times: February 27, 2011】

Newsweek and Daily Beast Hire Two More
【New York Times: January 31, 2011】

Newsweekの再建を任されたTina Brownの近況については例えば次の記事が参考になる。

Tina Brown’s Quiet Restart of Newsweek
【New York Times: February 20, 2011】

Tina Brownは、雑誌の名編集長と呼ばれる人物の一人で、84年から92年までVanity Fairを、92年から98年までNew Yorkerの編集長を務めた。VFでは写真家のAnnie Liebovitzを起用し、今に続く同誌の、グラフィカルな構成の雛形をつくった。VFにせよ、NYerにせよ、在任中は数々の賞を受賞した。NYerを退社した後は、Talkという雑誌を立ち上げたが上手くいかず、その後は執筆やテレビ番組の進行役を務めていた。

その彼女が、メディアグルの一人であるIACのBarry Dillerと組んで始めたのが、今回Newsweekとの合併を決めたDaily Beastというウェブサイトマガジンだ。今後は、両者の統合を図っていくようだ(なにしろ、会社としては、The Newsweek Daily Beast Companyとなったため)。

Tina BrownはNewsweekとDaily Beastとを統合しつつ、新たな雑誌とウェブサイトの両方の再生を図ることを期待されている。

正確に言うと、再生というよりは新生だ。つまり、VFに写真の要素を大々的に入れ、それを通じていわゆるセレブリティへのアクセスもある雑誌のポジションを確立したようなことを、今回も期待されている。

とはいえ、不安要素は多い。

第一には、身も蓋もないことだが資金のこと。NewsweekはWashington Post CompanyからSidney Harmanという人物に一旦買い取られた。Daily Beastとの合併はHarmanと行われた。そのHarmanが再建に用意している資金は、3年間で4000万ドルということだが、しかし、その額は、Newsweekが昨年の一四半期だけで費やしたコストに相当するという。この額の感覚をどうするか、ということ。

また、上のNYTの記事によれば、Tina Brown が成功させたといわれるVFやNYerも当時、雑誌の収支としては赤字だったということ。要するに、Tina Brown自身は衆目を集める手立てには長けていても、雑誌を単体で利益を生むようなことをしたことはないということだ。この点は、非常に危ぶまれる。

ちなみに彼女が在任中だった90年代はアメリカは好景気を経験していた時で、いうまでもなく好景気時は、(放っておいても、というのはいささか語弊があるかもしれないが)広告がガンガン入ってくる時だ。だから、好景気の時は、とにかく発行部数を増やし広告の売上を上げるのは理にかなった方法になる。その意味では、Tina Brownの取った、「目立つ」方法は間違っていなかった。セレブリティとのアクセスは当然、彼らからの信任にもつながる。

不安要素の第二点は、Tina Brownが既に57歳である、ということ。これは、ウェブをメディア化していくときにプラスとなるかマイナスとなるかは、微妙なところだ。

ウェブとしての流通性を高めるために、冒頭に紹介したように、たとえば、Andrew Sullivanを彼のブログごと移籍させる、というようなことに着手しているわけだが、ブログの集積とブロガーのネットワークということであれば、先日AOLによる合併が決まったHuffington Postの方が圧倒的だろう。

(ブロガーのサイトごとの移籍というのは面白い現象ではある。ブロガーがいわば新聞のコラムニストのような位置づけを得た、ということだ)。

もちろん、Arianna Huffingtonの今後の手腕にもよるが、とりあえず、AOLは一定数のユーザーベースは持っている。これをベースにメディアとしてのレバレッジをかけられるHuffPoとはやはり環境が違う。VFに写真を導入し、というようなことが、果たしてブロガーを参集するぐらいで何とかなるものなのか、というのも当然疑問になる。

こう書いてくると、Newsweekの将来には簡単な成功の道はないように思えてくる。

少なくとも確実なのは、NYTの記事にもあるように、「ゼロベースで新しいサイトと雑誌を作ったほうが早いし、その方が重要だ」ということだろう。つまり、Newsweekは様変わりせざるを得ない、ということだ。

BusinessWeekもBloombergに買収されて記事の内容が全く変わった。それでも、彼らは一応、BusinessWeekという看板は残している。それと同じようなことがNewsweekにも起こるということだろう。

いずれにしても、ウェブはユーザーの動きにどこまで適応するか、というのが第一で、ついで、そのユーザーに対して、ウェブ上開発されている広告手法をどう差し込むか、そして、それを翻ってどう誌面の方に転用するか、が大事になる。この点で、Tina Brownが一体どんな新生Newsweekを世に送り出すのか、その続報に期待したいと思う。