FERMAT communications visionary

March 16, 2011

op-ed / commentary


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junichi ikeda

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Huffington Post Media Groupはジャーナリズムの新形態を模索する

March 16, 2011

op-ed / commentary


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junichi ikeda

AOLと合併して新たにHuffington Post Media Groupとなった旧HuffPoが、今後のメディアグループの戦略として人材の調達に乗り出している。その中で、Twitterの共同創始者の一人であるBiz Stoneが"social impact”に関する戦略アドバイザーとして参画することが公表された。

Twitter's Biz Stone to Advise AOL
【Wall Street Journal: March 14, 2011】

Stoneが担当するのは、cause-based initiativeといわれるもので、今のところ想定されているのは、、あるコミュニティの中でのボランティアを促すシステムを構築することと、フィランソロピー活動を行っている企業のビデオを作ること、などのようだ。もちろん、今後、さらにアイデアは広がっていくことだろう。

要するに、ソーシャルネットワークのもつポテンシャルを生かして、人々の接続を促し、また、社会的な行動をしている企業の紹介役を努める。単にレポーティングをするのではなく、人々の行動の動機付けを行うところまで着手する。その意味では、既に従来型のジャーナリズムの域を越えたことを行おうとしている。

Stone自身は、「複数の企業に働きかけて、新しいビジネスの仕方を考案していく」と答えており、彼自身もTwitterでの経験を活かして「提案型」の情報流通を試みようとしている。

Stoneは彼のブログでもそのようなことを書いている。

BIZ AND AOL
【Biz Stone Blog: March 14, 2011】

Stoneの招聘とsocial impactについてはArianna Huffingtonも記している。

Biz Stone and the Power of Giving Back
【HuffingtonPost: March 14, 2011】

なお、HuffPoには以下のリリースがアップされている。

The Huffington Post Media Group Makes Key Announcements
【Huffington Post: March 14, 2011】

リリースにあるとおり、今回の発表の多くは、経験のあるジャーナリストの引き抜きであり、Huffington Post Media Groupをジャーナリストのドリームチームにしようとするものだ。

たとえば、NYTやLos Angeles Timesでエディターを務めたJohn Montorioが文化・エンタメのエディターにつき、NBCとMSNBCでアナリストを務めたHoward Finemanがグループのeditorial director(編集監督)に就任する。

このように、新聞とテレビの両方からとにかく「ジャーナリスト」を集めている。たとえてみれば、新たなサッカーチームを作って、そこに優秀な選手を集めて、いきなりリーグ優勝を目指すような布陣を敷こうとしているようなものだ。裏返すと、それくらいジャーナリストが個人名のたった専門業とみなされているわけだ。

その分、個性派の人物が集められていることになる。たとえば、John Montorioについては、Journalism vs Churnalism というフレームで紹介されている。

John Montorio Joins HuffPo: Journalism vs Churnalism Battle Rages On
【TechCrunch: March 14, 2011】

ここでjournalismと対比されているchurnalismとは、もっぱらアクセス数の向上を上げるために情報を早期にアップスすることを重視する姿勢で、そのためソースの確認や背景の確認を重視しないものを指している。プリント媒体であればイエロージャーナリズムに近いが、内容の扇情性よりも、とにかくSEOの向上に照準を当てているところが、新たにchurnalismという名で呼ばれる理由のようだ。そして、John Montorioの参加は、もっぱらchurnalismの方向にあったAOLからすれば大きなニュースであるということだ。

いずれにしても、Biz Stoneの参加もあわせて考えると、HuffPoとAOLの統合で起こることは、ウェブ上での「ジャーナリズム」のあり方そのものの変化、ということになりそうだ。

churnalismというのは何もAOLだけにあてはまるものではなくて、いわゆるアグリゲーターやポータルのような、ウェブ上に既にある情報を取りまとめるサイトで取られてきた方法だ。その場合、ニュースソースの多くは、従来からあるプリントや放送などの媒体で、第一にはそれらの媒体に向けて作られてきた情報がウェブにアップされたものをであった。

こうした事態に最初の変化が現れたのが、Web 2.0以後の、ブログが一般化してから登場したHuffPoのようなサイト群で、これらの多くは当初はブログの組織化として始まり、その過程で、従来メディアのウェブサイトの記事も参照されることになった。

HuffPoのような、ブログ型のポイントは既存のニュース記事を複数読み、コメンタリーを提供する。つまり、多数ある情報を選び取り了解するための指針としてのブログエントリーであり、そのような指針を与えるナビゲーターとしてのブロガーであった。

したがって、今回のMontorioのようなジャーナリストの移籍は、コメンタリーの元であるニュースそのものの制作の部分にHuffPoが乗り出そうとしていることの現れなのだろう。これは、この数年の新聞やニュース雑誌の経済的低迷を反映したものでもある。オリジナルのニュースを、(紙や放送ではなく)ウェブ用に作り、ユーザー提供する方向だ。

その上で、Stoneのようなソーシャル・ネットワークの経験者を招聘することで、提供する情報に、その利用者や読者である人々の意向や疑問を反映させる。つまり、利用者の観点からの疑問に応える。

ただし、利用者の観点と言っても、単に興味本位の情報取得にとどまらないようにするために、cause-based initiativeという形で、取材や情報伝播の「社会的目的」をユーザーや読者に訴えることにも力を入れる。つまり、ウェブ時代に即した社会的(公共的)な情報を提供する主体として、ジャーナリズムの役割やあり方についての新しい形を提案していく。おそらくは、このようなことをHuffPoは想定しているのだろう。さらには、ウェブ時代の「啓蒙」の在り方を示唆するものとなるようにも思える。

いずれにしても、Huffington Post Media Groupの試みは、「新聞の未来ではなくジャーナリズムの未来こそが重要な課題である」という、この数年、アメリカのジャーナリズムに関するシンポジウム等で強調されてきた課題に対する、実践的な解答を与える試みとして位置づけられる。興味深い動きだ。

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