FERMAT communications visionary

March 22, 2011

op-ed / commentary


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junichi ikeda

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App StoreはAppleの占有物なのか?

March 22, 2011

op-ed / commentary


author
junichi ikeda

Amazonが、Androidの上でApp Storeを開始した。

Amazon Opens an Android App Store
【New York Times: March 22, 2010】

それに対して、Appleが”App Store"は同社のトレードマーク(商標)である理由から、AmazonがApp Storeを名のるをやめさせるように、裁判所に差止め(injunction)請求をしている。

Apple Sues Amazon Over Term 'App Store'
【Wall Street Journal: March 22, 2010】

Amazonは正確には”Appstore"とスペース無しの一単語として導入しているようだが、そんな違いは音で聞いたらわからない。ということで、差止めを請求している。このあたりの、知財上(商標保護)のやり取りは、裁判所の判断等に任せることにしたいが、ユーザーの感覚としては、「アップストア」という言葉自体はもはやほとんと普通名詞として、機能に対して使っているように思うので、それをどうするか、ということになるのだと思う。

もっとも、Appleについては、ここのところ、そのプラットフォームのクローズドなところに対しては、外部から批判が絶えない。前に書いたように、そのようなAppleシステムの閉鎖性について疑問を投げかけ続けてきた、Tim WuもFTCのアドバイザーになったこともあるので、裁判所の命令とは別に、政策としてこのような事態にどう対処するか、という動きが出てくるのかもしれない。

ともあれ、そのような商標上の問題は脇に置くと、今回のAmazonの動きは面白い(以下では煩雑になるのでApp Storeを普通名詞的に使うことにする)。というのも、Amazon事態は、マルチプラットフォーム対応で、とにかくユーザーへのアクセスを確保しようとしているように思えるからだ。

まずは、Androidの上で独自のApp Storeを作るところは、インターネット上でECサイトを作った同社の歴史の反復のように見える。

もちろん、GoogleがAndroidをオープンにしているからこそ成立するものだ。というのも、Google自身もAndroid上でApp Storeを提供しているからで、やろうと思えば、AppleのようにAmazonのApp Storeの展開を排除することもできるはずだが、Googleはオープンを選択したのでそのようなことにはならない。むしろ、競合となってもいいのでAmazonのApp Store開設を認めている。容易に想像がつくように、AmazonがAppleと競合してくれればいいからだ。実際、NYTの記事にもあるように、AmazonとAppleは、デジタルコンテントという形のAppで競合している。本も音楽も映画も、という具合にだ。

裏返すと、GoogleのAndroidは、Amazon App Storeのようなプラットフォームの複数並存を支える、メタ・プラットフォームになっているともいえる。

つまり、App Storeとしては、Apple、Google、Amazon、が並び立つことになる。

面白いのは、同じApp Storeを開催しても、三者で実際に提供するAppの扱い方が異なるところだ。つまり、App Storeをデパートと見做せば、そのデパートに入るテナントやテナントが扱う商品への対応方針が異なるようなものだ。

一番厳しいのがAppleで、同社の場合は、Appの中身の吟味を厳格に行う。いわば、テナントの商品の内容や価格についても厳格にコントロールしようとする。

一方、最もそういう縛りがゆるいのがGoogleで、個々のApp事業者の自主判断に任せる。その意味では、デパートというよりもむしろバザーのような、人の集まる場所を単に用意するだけの、イベント主催者のようなものだ。

Amazonはこの中間で、テナントの商品にも一応きちんと口をだす方針だ。

もちろん、これはAmazonが既に本に限らず、何でも売るECサイトとして圧倒的な地位を築いているからであり、口をだす一番のポイントは、今までウェブ上の商売で集めてきた顧客リストと、顧客の決済手段であるクレジットカードによる金流にも既に関わっているからだ。だから、AmazonのApp Storeに属するものは、Amazonのレコメンデーションエンジンの中で推奨してもらうこともできる。

つまりは、このようにして、リアルな商品の買い物実績から推測された嗜好性に従って、デジタルコンテントのような「イマジナリー」な商品も紹介されるようになるということだ。もちろん、逆のルートも可能だ。

このような意味で、AmazonのApp Storeへの参画は、タブレットやスマートフォンの可能性をさらに広げていくことになるだろう。

AmazonがAndroid Kindleを売りだすかもしれない、という観測も、このような文脈でリアリティを持つことになる。

Is Amazon Working on an Android Kindle?
【New York Times: March 18, 2010】

いずれにしても、Androidの登場によって、iPadが開拓したタブレットコンピュータという端末の市場が、徐々にオープンにされていく方向にあるのは興味深い。さらに、Kindleのような専用端末や、あるいは、スマートフォンの一部機能も、タブレットの中に収束していくような方向にあることも、面白い。

いってしまえば、PCの最初期の出来事(Apple vs Microsoftによる端末のオープン化)と、ウェブの最初期の出来事(ECサイトの登場によるエコシステムの構築)が、同時期にあわせて起こっているということだろうか。

このような潮流も踏まえた上で”App Store"という商標がどういう道を今後辿るのか、注目しておきたい。

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