FERMAT communications visionary

March 28, 2011

op-ed / commentary


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junichi ikeda

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欧米でインフレ化するスポーツコンテント

March 28, 2011

op-ed / commentary


author
junichi ikeda

欧米を中心に、スポーツコンテントの放送権が今までに増して高騰している、という。

Television: Inflated assets
【Financial Times: March 24, 2011】

ウェブやDVRの影響でタイムシフト視聴が当たり前になり、テレビ放送時のライブ視聴が回避されるようになったが、そのような中で、スポーツ中継における、勝敗の決する「今」は数少ないライブの価値を増すものだ、というのがその理由だ。

とはいえ、このロジックは、ウェブの登場以後、かれこれ10年余り言い続けられてきたことで、むしろ、それが事実としてすっかり定着してしまったことの方に改めて驚いた。

記事中にあるように、アメリカのスーパーボウルや、ヨーロッパのプロサッカーリーグの放送権が過去5年、ずっと上がり続けているという。しかも、買い手である放送事業者、ならびにその買値のコストを実際に払うことになる広告主となる一般企業からすると、スポーツの他に大量の視聴者、しかも広告主に取ってより意味のある、若い視聴者や可処分所得の高い視聴者へのアクセスを短期に大量に可能とするコンテントは、スポーツ以外に見当たらない、というのが定番の見方のようだ。そのため、放送権の購入コストが上がるのは、放送事業者からするとやむなきものという認識になっているという。記事中にあるように、これはポーカーゲームのようなものとなる。

記事のタイトルにある「インフレした資産」というのはそのような意味を持つ。

問題は、インフレした資産=スポーツ放送権が、調整可能なインフレなのか、それともバブル化しているのか、というところだ。記事の最後は、後者の視点に立ち、テレビの脆弱性(fragile)に懸念を表明している。つまり、スポーツそのものへの関心が減る、関心は減らないが広告主にとって有意な視聴者数が減る、すなわち、可処分所得の高い人や若者の数が減る、などなど。

少なくとも映像視聴をテレビからウェブに誘導しようという動きは増えているのは、前のエントリーでも紹介したとおりだ。

たとえば、Google/YouTubeは現在、ハリウッドの「エージェンシー」と個別にインタビューを進めているという。

Hollywood makeover for YouTube
【Financial Times: March 27, 2011】

ここではハリウッドが対象となっているから、エージェンシーのクライアントとしては俳優やシナリオライター、映画監督などが第一だと思うが、もちろん、ミュージシャン、アーティスト、そしてスポーツ選手も含まれる。そのような人の個人チャンネルをYouTube上で作っていこうというものだ。

これはTwitterやFacebookのようなソーシャルネットワークが、関心や興味のある人の事前登録を可能にし、その人達に向けてYouTube上での映像配信を告知することが容易になった結果でもある。

先日も、GoogleYouTube上で、Lady Gagaのインタビューを配信していた。公開インタビューはアメリカではよく行われるため、その中継ないし配信というのは一番わかりやすい、個人が行う情報発信のあり方だ。”Actors' Studio”と言う、映画俳優にインタビューを行う番組のようなものだ。

このように、現在は、テレビ的ライブ中継とウェブ的ライブ配信が同時並行で進んでいる。とはいえ、結局のところ、問われるのは人々=視聴者がどちらを選ぶのか、ということになる。そして、その時の誘引がコンテントだけなのか、コンテントの周辺にあるユーティリティも含めてなのか、がポイントになる。つまりは、利用者のリテラシーをどこに置くかということだ。

いずれにしても、2011年になって映像配信の話題が以前にも増して増えているように思える。注意しておきたいと思う。

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