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May 12, 2011

op-ed / commentary


author
junichi ikeda

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MicrosoftによるSkype買収の行方

May 12, 2011

op-ed / commentary


author
junichi ikeda

噂通り、Microsoftが85億ドルでSkypeを買収することが公表された。

Microsoft Dials Up Change
【Wall Street Journal: May 11, 2011】

Microsoft to Buy Skype for $8.5 Billion
【New York Times: May 10, 2011】

Microsoft in $8.5bn Skype gamble
【Financial Times: May 10, 2011】

For Microsoft, Skype Opens Vast New Market in Telecom
【New York Times: May 10, 2011】

Microsoft must simplify for speed
【Financial Times: May 11, 2011】

Skypeは世界中で毎月1億7000万人のユーザーが平均100分以上りようしているという。最近では単なる音声通話だけでなく、ビデオも併用することが増えている。

VoIPはもう5、6年ぐらい前から国際通話で利用されることが多かった。空港の出発ロビーで、パソコンにヘッドファンとマイクをつけて通話している姿を見かけたものだった。それが今では、すっかり日常に溶け込みつつある、ということになる。

「Skype会議だん」という言葉をTwitter上で最近見かけるように単なる通話ではなく会議のような複数の人々による通話も増えている。あるいは、アメリカのテレビ報道を見ていると、中継方法としてSkypeによる映像付きインタビューを行うのも普通に見られるようになった。

いわゆる電話の高度化、マルチメディア化は、Skype+PCを通じて必要とするユーザーを通じて進められてきた、というのがここのところの実態で、そのトレンドをMicrosoftががっちり取り込もうとした、というのが今回の買収ということになる。

メール、チャット、Twitter、等々、インターネット上では既に多様なコミュニケーションの方法があり、ユーザーはそうした「多様なコミュニケーション形態」に慣れることで、たとえば、チャットの経験を通話経験に転用しようというような、あるコミュニケーション形態で当たり前になった経験を、他のコミュニケーション形態にも適用することを普通に考える。そのような思いつきに応えることでアプリケーションの開発が進んでいく。

もっとも、コミュニケーション形態の多様化の支援というのは、Facebookのようなソーシャル・ネットワークのサービスの本質でもある。どんな手段であれ、登録ユーザーの間の「ソーシャル・ネットワーク=社交」機会を増やすことがFacebookらのサービスの目的だ。だから、今回のSkype買収はMicrosoftなりのソーシャル・ネットワークへの一里塚の確保といっていいのだろう。もっとも85億ドルによる買収が経営戦略上妥当なのかどうかについては投資家を中心に疑問も出ている(MSのCEOのバルマーに対する風あたりも強くなっているようだ)。

Skypeは以前eBayに買収された。その時の想定ではオークション時のコミュニケーションの支援に役立つというものだったが、どうも想定通りには使われず、結局、スピンオフされた。そのようなサプライヤーの側の都合でのコミュニケーション支援よりも、VoIPの当初の目的通り、コストの安い電話方法であるという性格からユーザー数を増やしていった。つまり、利用者からの、消費者からの、ボトムアップの利用意向に応じてサービスの具体化を図るほうが、この手の基本機能サービスとしては適切な対応方法になりつつあるということだろう。そして、Microsoftもそうした基本機能として、PCやスマフォやゲーム機に搭載していくことになるのだと思う。

しかし、それにしても、インターネットないしソーシャルネットワーク分野での、Microsoftの起死回生の策が、まさかVoIPに向かうとは思っていなかった。それこそ90年代によく聞かれたマルチメディア市場を制するのは誰か、という問いに対しては、PC事業者に加えて、電話、ゲーム、家電、が名を連ねていた。当時から、インターネットベースの通話サービスは大幅なコストダウンが可能で、インターネットのキラーアプリと言われていた。そうしたシナリオが10年代に入ってようやく現実化してきた、ということかもしれない。

また、日本であれば先日の311の地震時に経験されたように、既存の電話網は急激なトラフィック増に対応できず「つながらない」状態が生じる。簡単に電話ができる携帯電話の普及からそのような機会も実体験も増えてきた。インターネット経由というのはそのような際の迂回路の一つになりうる。これも震災時に経験されたことであった(もちろん、その一方で、インターネットは電源の確保という問題もあるの確かだが)。

つまり、単にコストだけでなく、ネットワークトラフィックの扱い、という点でも考慮対象になる状況が利用者側にもできつつある、ということだろう。

もちろん、SkypeのようなVoIP企業に対する既存電話事業者の風あたりが強いのは想像に難くない。現状では、携帯電話会社と組まないことには実質的に通話サービスが提供できないスマフォ市場ではとりわけデリケートなものだ。とはいえ、アメリカでは、主に反トラスト法の観点から、VoIPアプリをスマフォが拒絶するのはNGだ。であれば、ここから先は、携帯電話会社による無線データ網の配備と、Wi-Fiのようなインターネット網配備のどちらが広がっていくのが速いのか、ということに掛かってきそうだ。

タブレットコンピュータでは、3GとWi-Fiのデュアル装備とWi-Fiのみの場合、最近ではWi-Fiのみのものが好まれるという傾向もあるようだが、このあたりも、ユーザーの利用意向(端末は必ずしも一つではないという事実など)や行動様式が鍵を握るところのようだ。

今後は、MicrosoftがSkypeをどう扱うのかにまずは注目していきたい。戦略や戦術によっては、Skypeの成長を減速させることもありえるからだ。

なにはともあれ、シンプルだが、久しぶりの、わかりやすい大型買収であったことは間違いない。

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