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June 24, 2011

op-ed / commentary


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junichi ikeda

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Huluは誰のものになるのか

June 24, 2011

op-ed / commentary


author
junichi ikeda

テレビ番組配信サイトであるHuluが売りに出されるようだ。

Website Hulu Considers Sale
【Wall Street Journal: June 22, 2011】

目下のところの株主は、メディアコングロマリットであるNews Corp、Disney、PEファームのProvidence、それに先日Comcastに買収されたNBC Universalであり、今回の売り出しによって、この少しばかり複雑な株主構成をシンプルに出来るのではないかといわれている。

もっとも、News CorpはFox、DisneyはABC、NBCUはいうまでもなくNBC、と、地上波テレビの四大ネットワークのうちの三社が株主として参加することでテレビ番組の配信契約が比較的容易に結ばれ、実際に地上波で流されていたテレビ番組をウェブ上で配信できた経緯もある。

比較的容易に、というのは、当然ながら、Huluとそれぞれのメディア会社が必ずしも協調してビジネスを進めてこれたわけでもないからだ。同一コンテントをテレビで見るかウェブで見るかというのは、結局のところ、ゼロサムゲームになるためだ。今回、Huluが売りに出されるのも、ちょうどコンテントの配信契約の見直しがなされるタイミングにあるから、というのもあるようだ。また、ケーブルテレビオペレーター最大手のComcastがNBCUを傘下に収めたことで、反トラスト法的関心を呼ぶことになる。

そのような経緯から、今回、Huluが売りに出される、というか、正確に言うと、Huluの経営陣が新たな資本家を求めたことになる。

(難しいのは、配信契約というアドバンテージがなければ、Huluもただの映像配信サイトに過ぎなくなるところだ)。


ということで、当然、買い手は誰か?という推測が飛び交うことになる。

Who Might Buy Hulu? Let the Guessing Begin!
【Wall Street Journal: June 22, 2011】

Yahoo!、eBay、Microsoft、というウェブ系の常連の名前に加えて、おそらくはHuluの最大の競合であるNetflixによってDVDやビデオのセールスに影響が出てきたWalmartの名前も挙がっている。

その中で、Googleに買収されるのを期待するのが以下の記事。

Goolu
【Slate: June 23, 2011】

Netflixのカウンターパートを作るのが、結果的に映像制作セクター≒ハリウッドにも得策である、という意見となる。

面白いのは、他の可能性のある買収先へのコメントで、たとえばYahoo!が買うとスタータップはどれもダメになるであるとか、Appleではまたもやプロプライエタリネットワークに囲われてしまうであるとか、なかなか辛辣だ。

その上で、Googleがよいのは、やはりウェブ上の広告の商流を最も強く手に入れているところだ。いわゆるディスプレイ広告についてもGoogleの売上は上がってきている。

とはいえ、この話は、最終的には映像制作会社、つまりはハリウッド側の意向が大きく影響する。DVDや、最近であればBlurayのようなパッケージ販売のルールをいつまで残すのか、また、衛星やケーブルによる多チャンネル放送において各国で作ってしまった流通契約上の窓口会社をどうするか、さらには、パッケージでも放送でも既に導入してしまっている「リージョン・コード」をどうするのか、等の、既存システムの扱いが浮上するからだ。

少なくとも活字文化の方では、リージョンの存在はほとんど関係なく、ニュースサイトであれば契約すれば、NYTでもWSJでも読むことができる。AmazonのKindleで購入すればほぼリージョンは関係なく電子本は購入できる。ほぼ、というのは、稀に、たとえば、Asia-Pacificでは購入できないKindleの電子本があるからだ。もちろん、物理的な本を購入するのであれば、そのようなリージョンによる制約はない。基本的には在庫があるかないかだけが障害になるくらいだ。

そのようなテキスト文化財の世界的な流通性に比べれば、映像の流通は、もともとその流通の上で様々なインフラや機器が必要だったため、簡単にはいかない。つまり、映像配信の本流は、いまだに一つの世界市場ではなく、分割された地域市場の集積として扱われている。

その意味では、HuluでもNetflixでもGoogleでもAmazonでもいいから、そのような映像の世界市場を構想できる会社が出てくることが一番業界的にはインパクトがあるだろう。そして、その点では、もしかしたらAppleのSteve Jobsが最もboldな試みを映像においても行うのかもしれない。マーケットのルールを変える、という点では、Jobsの行動力には注目したいところではあるが。

なんにせよ、Huluが曲がり角にあることだけは間違いないようだ。

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