FERMAT communications visionary

October 27, 2011

op-ed / commentary


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junichi ikeda

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Channel-centricに転身するYouTube

October 27, 2011

op-ed / commentary


author
junichi ikeda

YouTubeが来週あたり、プロの映像制作会社によるチャンネルを幾つか提供することを発表するという。

YouTube Close to Announcing Video 'Channels'
【Wall Street Journal: October 27, 2011】

UGC(User-Generated-Content)で今までやってきたYouTubeだが、グローバル映像プラットフォームとしての地位を確立すべく、映像のプロも取り込もうとしてきているようだ。この話自体は、前々から伝えられてきたことでもある。

YouTube Goes Professional
【Wall Street Journal: October 4, 2011】

提携先としては、IACのElectus、News Corp.の一部門であるShineReveille、RTL GroupのFrenchmantleMedia だという。最後のRTLはフランスのテレビ局であるM6等を保有する会社で、パートナー先が英米だけでないところが新しいところだ。

映像配信プラットフォームは、足下の欧米での景気後退の煽りも受けて、各社とも戦略の見直しを迫られている。

先日発表されたように、長らく売りに出されていたHuluは、結局売却がとりやめになった。DVDのレンタルから始まり今ではストリーミング大手となったNetflixは、DVDレンタル部門とストリーミング部門を事業会社として分割する計画を発表直後にとりやめにした。状況は思いのほか、混沌としている。

YouTubeの動きは、こういう混乱の中で、先行者優位を再度強化するために手を付けているように見える。今後は、ハリウッドメジャーが乗るかどうか、あるいは、有力な映像プロデューサーが個人名の表明と共に参加するのか、にもよるだろう。

今回、RTLが参加しそうだということを聞いて気になっているのは、YouTubeは(ということはGoogleは)従来からあるリージョン・コードを果たして採用するのかどうか、ということだ。リージョン・コードの存在によって、たとえばアメリカで買ったDVDは日本製のプレーヤーでは再生できないということが起こる。これは、DVDの頒布をエリア単位で管理・調整していこうというものだ。同じように、放送権についても、通常は国単位で販売がなされる。

これらは、映画館や放送局といった当該コンテントの流通の末端が、各国の地元企業であることが多いために生じたルールだ。しかし、いうまでもなくYouTubeのようなウェブの映像配信プラットフォームは、原則的にはそのような制約を受けない。もちろん、映像提供会社との契約によって、あるいは、YouTubeの内規として、従来からあるリージョン・コードを尊重する、という選択もある。その一方で、そのようなリージョン・コードに囚われずに、異なるアクセス権の設定(販売方法を含む)を行うこともできる。

インターネットは冷戦終結後、軍事利用だけでななく民間利用もできるよう商業化が解禁された。同じ90年代に起こったのは、通信衛星の商業利用としての衛星デジタル放送の事業化だった。たとえば、News Corp.のルパート・マードックは、既に欧州で事業化していたBSkyBに加えて、アメリカ、アジアで同様の衛星放送サービスを展開することを計画した。そうすることで、世界中の映像配信の要を握ることが出来るからだ。アジアでは、香港のスターTVや、日本のJSkyB(後に他の衛星放送会社と合併し、今のスカパーとなった)を試み、アメリカでは紆余曲折あったがDirecTVを所有(後に売却)することで、所期の計画を一応は完成させた。

YouTubeの動き、あるいはHulu等の他の映像配信会社の動きは、往時の衛星放送競争の頃を思い出させる。ただ、YouTubeが衛星放送の動きと異なるのは、既にウェブが普及した所から始まること、また、ウェブの初期のルールからリージョン・コードが厳格には設定されずに展開してきたことがある。

たとえば、私はWall Street Journalがウェブ上で配信されるようになったかなりの初期から契約しているが、このように外国人でも閲覧し、必要があれば契約できる仕組み=環境が提供されてきた。

となると、映像についても、そのような環境、つまり、リージョンに囚われずに、ユーザーがアクセス可能(有料か無料かという制約はあるのは当然だろうが)な状況はまずは確保されることを期待したくなってしまう。

特にYouTubeについては、サービス名に「You」と冠しているように、パソコンの画面に向かう一人一人の視聴者=ユーザーがその成長を支えてきた。その際のポイントは(文化コード的なものによるアクセス権の設定はあっても)基本的には誰もがアクセス可能だということだった。となると、YouTubeについては、その方向を引き続き堅持して欲しいところだ。

ともあれ、来週になれば提携先も明らかにされるのだろう。まずはその発表に注目したい。

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