スーパーボウルがストリーミングされる時代

December 21, 2011

op-ed / commentary


author
junichi ikeda

来年2月のスーパーボウルがウェブやアプリでライブでストリーミングされるという。

Livestream the Super Bowl, Kick Off Disruption of Broadcast TV
【Wired: December 20, 2011】

NBC Will Stream Super Bowl
【New York Times: December 20, 2011】

スーパーボウルはアメリカンフットボールの全米ナンバーワンを決める頂上決戦で、2月という真冬の開催もあり、全米の人々が、家族や友人たちと一緒に、さながらパーティを開催するように、試合中継を視聴し、一喜一憂する、国民的イベントだ。多分、この盛り上がりは、一度、アメリカでスーパーボウル当日を迎えないとわからない。大リーグやNBAが盛り上がるであろうことは留学前から知っていたが、アメフトについては今一つイメージがわかなかったのだが、NFLの異常なまでの盛り上がりを見て、文字通り「アメリカン」なフットボールであることを、留学中に経験した。

スーパーボウルのスポンサーは企業の広告機会としては最高の舞台であり、毎年趣向を凝らしたCM群が放送されることでも有名だ。試合の休憩中に催されるコンサートやイベントでも大型アーティストが必ず呼ばれ、こちらも必ず注目を集める。要するに、全米最大のメディアイベントであり、祭りだ。そのため、単なるスポーツイベントにとどまらない、象徴的な意味も帯びている。

そのスーパーボウルがライブストリーミングをする。つまり、アメリカのメディア産業が、いよいよウェブやアプリ、PCやスマフォ、タブレットを、彼らのコンテント接触のために不可欠のものと認識したといっていいだろう。象徴的意味を持つとはそういうことだ。コンテントのメディアバリューを維持し続けるためにも、また、当日の視聴者によるバズ等の効果のために、ウェブを利用することが不可欠であるという判断がされたのだろう。

多分ここで賭けられていることは、将来のファン=視聴者を維持していく、ということなのだと思う。テレビを観るかどうか、あるいは視聴率がどの程度になるか、という直近の関心もあることは間違いないし、それらの数字だけなら、場合によるとまだまだウェブを等閑視しても平気だということになるかもしれない。けれども、20年後、30年後も、今同様に、スーパーボウルが、全米の関心を集めるビッグ・イベントであり続けるのか、という視点に立てば、ウェブを利用する人々を無視できない、ということになるのだと思う。アメリカの場合、若年層の人口も増え続けていることで、メディアビジネスとしても、新規の視聴者の育成と確保が大事だという認識をもちやすいことも影響していることだろう。

コンテントといっても、プロスポーツは本質的に興行ものであることはやはり大きい。球場に足を運んでくれる熱心なファン、とりわけ地元のファンがいるからこそビジネスとして成立する世界だ。また、音楽のアーティストと同様、素朴に子供が未来の夢を賭ける存在であることも大きい。さらには、体一つで個人が偉業を成し遂げる、という点でも、一つのロールモデルになりうる。未だにスターを生み出しうる、稀有なメディア分野だ。このように、スポーツは、微妙に教育や公共とも接点のある領域といえる。

当日のライブ配信がどのように行われるのか、また、それを巡ってどのような解釈がなされるのか。リアルなイベントのレベルでも、それを取り巻く言説のレベルでも気になる動きといえる。