FERMAT communications visionary

January 23, 2012

op-ed / commentary


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junichi ikeda

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混戦化する共和党予備選

January 23, 2012

op-ed / commentary


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junichi ikeda

サウスカロライナ州での共和党予備選ではニュート・ギングリッチ候補がミット・ロムニー候補を12ポイントも引き離して圧勝した。

Gingrich Wins South Carolina Primary, Upending G.O.P. Race
【New York Times: January 21, 2012】

Gingrich Wins in South Carolina
【Wall Street Journal: January 22, 2012】

アイオワで8票差という僅差で首位に立ち、続くニューハンプシャーで安定的にトップを獲得したロムニーが独走するのか、と思われていた矢先での逆転劇となった。予備選前の予想通り、どうやら今回の共和党予備選は本命不在のまま、混戦が続く模様だ。アイオワで8票差で二位についたリック・サントーラム候補に加え、首位は得られないものの各州で安定的に支持を集めているロン・ポール候補、の四者で基本的に、この先、予備選のゲームが進められる。既に大手の報道機関の見通しでは、本選の候補の決定には3月までかかる、場合によると4月以降にまでもつれ込むかもしれないというものになってきた。

既に候補同士での中傷合戦の動きも目立ち始めた。目下のところ注目を集めるのはロムニーの税金支払いの問題だ。彼は、マサチューセッツ州知事の前には、ベイン・キャピタルというベンチャーキャピタルの経営に携わっていて、キャピタルゲインという収入形態、あるいは収入の入金口座の所在地(タックスヘイブンで有名なケイマンの口座もあるのではと噂されている)のことなど、不透明なものが多く、合法的な節税かもしれないが、しかしもしかしたら脱税をしているかもしれない、という具合に疑惑が投げかけられる。それ以前に、いや、そもそも、一般のミドルクラスと比べても税率が低いのを享受してきた人間に統治者としての資格はあるのか、という疑問も出る始末で、候補者の人間性を問う声も出されている。今後は、このような人間性を問うような中傷合戦が互いになされていくことになるのだろう。

その一方で、エンドース合戦も熱が入り始めているようで、特定の候補を支持することで後日、副大統領候補として指名を得ようとか、あるいは、将来的にキャビネット入りを狙う動きも散見される。そのようにして、外野による応援合戦も本格化する。

2008年の大統領選では、オバマ陣営とマッケイン陣営とで明らかにウェブの活用の仕方に差があったが、さすがに4年経った今回は、どの候補者もウェブの利用は当たり前になったし、選挙戦の過程でウェブを通じた公開討論も当たり前になった。FacebookやYouTubeを使うのはもはやイロハのイとなった。ウェブ上のメディアサイトもすっかり定着し、4年前には新参者(new-comer)であったPoliticoも今では筆頭の政治ジャーナリズムサイトとなった。選挙戦や政治過程でウェブを援用するのはすっかり一般化した。

むしろ、今年の大統領選は様々なレベルで成熟したウェブの利用方法が現れているようにみえる。技術的な斬新さよりも応用面での工夫が目立つようだ。現場の意向を加味して、より実効性があって洗練された手法として磨き上げられているようだ。

たとえば、ニューヨーク・タイムズは“Election 2012”というアプリをスマフォやタブレット用に用意している。選挙戦に関わる自社のニュースだけでなく、他社のニュースもピックアップしており(もっとも網羅と言うほど多くはないが)、大統領選に関するウェブ上の情報の手軽なハブになろうとしている。4年まであればHuffPoが行なっていたことを、従来からあるマスメディアのニュースサイトが手をかけるまでになった。NYTはウェブサイトを有料化したが、選挙戦に関するニュースについては別アプリとして切り出すことで、広く利用されることを目指しているようだ。この点は、選挙戦を通じて情報戦が大事であり、その情報戦のツールとしてジャーナリズムがPR媒体として利用されることも見越してのものだろう。結果的に、どこのサイトの「影響力」が強いのか、というのもモニターされるのかもしれない。少なくとも、報道メディアやジャーナリズムにとっては「社会への影響力」が経済的収益力同様、会社の成立に不可欠のものとして理解されている。

こうしたウェブの活用は、現職のオバマ陣営も同じで、こちらも2012年の一般教書演説を選挙戦ツールの一つとして活用することを考えているようで、ホワイトハウスからウェブでライブ配信も行われる予定だ。今年の政策の方向性を示し、その線で予算を組むことを議会に嘆願する機会でもある一般教書演説は、広くアメリカの意思決定層(政治家、ビジネスエグゼクティブ、法曹家、アカデミシャン、等)の注目を集め、必ずアメリカ市民全体に向けて報道されるイベントだが、それを有権者との双方向のコミュニケーション機会として位置づける。共和党の候補が地方回りの予備選対応に忙殺されている時に、このようなナショナルカバレッジの演説を行いコミュニケーション機会を得ることができるところを見ると、なるほど、なんだかんだいっても、現職大統領が有利である、というのも頷ける。

それにしても、共和党の予備選は不透明だ。共和党については、同じコンサバティブでも、経済・財政面、社会面、宗教面での、という形容が付く形で分派があるのだが、どうも今年の予備選では、それらの歩調が合わなくなっているようだ。それは、今回のサウスカロライナ州での結果を見るとわかる。どの分派がその地域の共和党の多数派を占めるかが地域によって大いに異なる、ということだ。

ウェブによって、Tea Party Movementにせよ、Occupy Wall Streetにせよ、ある政治的メッセージを持った運動の機動力は確かに増したが、しかし、選挙はそうした活動に直接的には加わらない人たち(一般的には穏健派と言われる人たち)も当然関わる。むしろ、そのようなサイレントマジョリティ、あるいは、支持政党なしの独立派(インディペンデント)が、選挙結果の帰趨を決める。その意味では、より高度で複雑な、そして長期に亘るコミュニケーション戦が続かざるをえない。

この先、11月まではそのような動きが続くわけだが、とはいえ、先ずは次の予備選が行われるフロリダの動きに注目したい。

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