FERMAT communications visionary

May 18, 2012

op-ed / commentary


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junichi ikeda

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FacebookのIPOカウントダウンに向けて

May 18, 2012

op-ed / commentary


author
junichi ikeda

FacebookのIPOがいよいよ目前に迫った。

Facebook Prices Its IPO at $38
【Wall Street Journal: May 17, 2012】

アメリカ時間の5月18日に上場されるが、売り出し価格は1株あたり38ドルで市場から184億ドルを調達する計画だ。時価総額にして1040億ドルの企業が誕生する見込みだ。

この数ヶ月は、この、今のところ成功が約束されたように見えるIPOについて様々な報道がされていた。関心の中心は、創立者でCEOのマーク・ザッカーバーグの成功譚だ。

Mark Zuckerberg could become second wealthiest man in US following Facebook IPO
【New York Post: May 17, 2012】

ザッカーバーグは個人資産の多さでいきなりビル・ゲイツと並ぶ存在になりそうだ。富豪として名を連ねるウェーレン・バフェットやラリー・エリソンを飛び越しての位置づけとなる。

こうなるともはや単なるサクセスストーリーといっていいのかすら怪しくなる。直感的には、20世紀後半のアメリカ財界が築きあげてきた全ての仕組みの上で実現された大成功としかいいようがないからだ。その点で、バフェットやエリソン、ゲイツの肩の上にいるのがザッカーバーグといえばいいか。

ビル・ゲイツによって築かれたPCが普及した世界があればこそ、ザッカーバーグは子供の頃からプログラミングに取り組めた。

ラリー・エリソンのオラクルや、今はオラクル傘下にあるサンがあればこそ、ザッカーバーグはWWWを使ってそのプログラムの成果であるFacebookをウェブのなかに放ち、多くの人々の目に触れ、ユーザーを獲得することができた。

ウォーレン・バフェットが、バークシャー・ハサウェイのアニュアル・レポートを通じて、株式市場の展望(と苦言)をしてきたからこそ、アメリカにおける株式市場の整備が進んでいった。

これらの先行した成功者の「成功」の上に、ザッカーバーグの成功があるように思える。だから、見る人によっては、これはこの数十年のアメリカの産業界の集大成のように思える。

もちろん、ザッカーバーグの成功は、シリコンバレーで過去20年に渡り整備されてきた起業支援システム、つまり、ベンチャーキャピタルやコンサルタント、弁護士からなるシステムがあればこそ、でもある。文字通りの「錬金術」がそこでは考案され、彫琢されてきた。彼らサポーターも、株式の保有を通じて、この成功の果実にありつくことになる。

Social Windfall: Facebook IPO’s Winners
【TIME: January 31, 2012】

アクセル・パートナーズのようなVCや、ピーター・シーエルのような投資家が、早期にFacebookに投資したリターンを得る。この、成功する逸材を見つけて投資をして、無理矢理にでも成功にまでこぎつけようとするシステムは、やはりシリコンバレーならではのものだろう。エンジニアを育成することは工学部を設置すれば可能だ。起業のための融資のシステムをつくることも銀行があれば可能だろう。しかし、そのシードマネーを注ぎ込んだスタータップを、牧場よろしく十分な規模にまで育て上げ、初期投資を越えるリターンを得ようとうする仕組みは多分、一朝一夕にはできないだろう。この、作物を育てるような感覚は、フロンティア精神の今日的姿のように思えてならない。

ところで、上のTIMEの記事では、上場後、ザッカーバーグをはじめとして株主が得るリターンが記されているわけだが、一つ気になったのは、シェリル・サンドバーグだけ、桁が一つ小さく1億ドルである、というところだ。もちろん、十分な金額だと思うが、ザッカーバーグが282億ドル、ピーター・シーエルでも25億ドルであるのを見るとやはり桁が違う。

これを見ると、サンドバーグが雇われのCOOというビジネスエグゼクティブに過ぎないことがよくわかる。他の株主は、文字通り投資家ないし資本家として参画している。COOはあくまでもOfficerであって、ボードメンバーでないこともわかる。会社のガバナンス構造の現実を見せられるようだ。つまり、投資家になるだけの成功は、起業による成功の報酬として得られるもので、エグゼクティブとしての成功はそれとは次元が異なるものということになる。

そうなると、IT企業のエグゼクティブの成功者が、たとえばメグ・ホイットマンのように、eBayのCEOをやめた後にカリフォルニア州知事に出馬し、落選した後に改めてHPのCEOに就任する、という具合に、エグゼクティブ=執行官としての、プロの道を歩むのもわかる。エグゼクティブとしての成功を糧に、次のエグゼクティブの場を求める。そう考えると、Googleのエリック・シュミットもNovellのCEOからの転身だった。プロのエグゼクティブにはプロとしてのキャリアパスがあるわけだ。

となると、ホイットマンがeBayで得た報酬を選挙資金にして政治家になろうとしたのと似た道を、サンドバーグやシュミットも選択してもおかしくないように思える。その点で、いささか唐突ではあるが、この11月の大統領選を経て、もしもオバマ大統領が再選された場合、サンドバーグやシュミットにも政府入りという道が浮上するように思えてならない。サンドバーグだけに限れば、大統領選の前にFacebookのIPOがあるのも、何かタイミングとして意味があるようにすら思えてくる。少なくとも、第一期のオバマ政権には、ワシントンDCとシリコンバレーを往復した経験のあるスタッフは散見された。

ザッカーバーグによって集大成された、過去数十年のアメリカのビジネスインフラは、今度は、政治と文脈を共有することで、広い意味でガバナンス=統治のインフラの彫琢に向かうのかもしれない。20世紀後半のアメリカ大統領は、大統領が政府運営の要ということで、州知事出身の人物がほとんどだった。エグゼクティブの経験が重視されたからだ。となると、今度は、州知事出身に代わり、ビジネスエグゼクティブ出身というのが、もう一つの大統領へのパスの一つとなるのかもしれない。その意味では、共和党のミット・ロムニー候補の浮上は、一つの徴候なのかもしれない。

ともあれ、日本時間ではすでに今日だが、5月18日にFacebookのIPOに注目したい。

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