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January 29, 2019

politics / society


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junichi ikeda

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ハワード・シュルツ、2020年大統領選に参戦か?

January 29, 2019

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junichi ikeda

Starbucksの元CEOのハワード・シュルツが、2020年の大統領選に、民主党からでも共和党からでもなく、インディペンデントとして立候補するつもりでいることを公表した。

Howard Schultz, Former Starbucks Chief, Is Preparing for an Independent 2020 Run
【New York Times: January 27. 2019】

ハワード・シュルツは、長い間、熱心な民主党支持者で知られており、いつかは民主党から大統領に立候補するのを目指すのではないかと噂されていた。とりわけ、2016年にドナルド・トランプが政治家としての経験が皆無であるにもかかわらず第45代大統領に選出されて以来、シュルツの立候補の可能性は高まったと見られていた。

それにしても、まさかインディペンデントとして立候補するとは、というのが、多くのアメリカの報道機関や識者の反応だ。

というのも、いきなり本選に「インディペンデント」として参加しても勝てる見込みはほぼゼロで、その結果、生じることは、民主党と共和党のうち、支持者が重なりそうな党の候補者の票を奪うことにしかつながらず、結果的に、支持者の重ならない党の方が、いわば漁夫の利で勝利するケースが圧倒的だからだ。

最近であれば、2000年の大統領選でラルフ・ネイダーが立候補することで、民主党候補のアル・ゴア支持者の票が流れ、その結果、ジョージ・W・ブッシュが勝利した。1992年の大統領選では、ロス・ペローが立候補したことで、共和党支持者の票が分かれ、結果として、再選を狙ったジョージ・H・W・ブッシュが負け、ビル・クリントンが勝利した。

つまり、シュルツの場合であれば、彼が従来支持してきた民主党の候補者の票を奪い、結果として、共和党の候補者を利することになる。よほどのことがない限り現職大統領が再選を目指すことになるので、シュルツがインディペンデントの候補者として立候補を表明した時点で、トランプの勝利が確実視されることになる。

これは2019年の年明けにエリザベス・ウォーレンがいち早く立候補したことで、早くも8名の立候補者が数えることになり、さぁ、これから向こう1年、候補者選びをしながら盛り上げていこうぜ!という気になっていた民主党からすれば、いきなり冷水を浴びせられたことになる。

そのため、すでにTwitterやFacebookなどソーシャルメディア上には、シュルツを非難する言葉や、そこまで行かなくても、シュルツに是非、立候補を思いとどまってくれと懇願する言葉が溢れている。極めてまともな反応だ。

そもそもトランプにしても、インディペンデントで立候補しようとするのを共和党の側が牽制して予備選への参加を促し認めたという経緯がある。本選で票を割られるよりマシだ、という判断からだった。もっとも彼が大統領に選ばれたことで、結果として共和党自体が乗っ取られてしまうとまでは想定していなかったようなのだが。

この点では、インディペンデントとしてバーモント州の連邦上院議員を務めていたバーニー・サンダースも似たようなもんで、彼が民主党の予備選に参加できたのも、本選で票を割られるよりもよほどいいからということからだった。

民主党か共和党かを問わず政党からすればそれくらい、インディペンデントの立候補者は、できれば本選以前に対処しておきたい存在なのである。

もちろん、シュルツはまだ立候補を表明したわけではないので、今後、立候補の意志を取り下げる可能性がないわけではない。なにしろ、民主党の予備選は2020年2月4日のアイオワから始まるので、まだまるまる1年ある。

おそらくシュルツがインディペンデントからの立候補の意志を明らかにしたのは、今のところ民主党の候補者の多くが、基本的には左寄りの、いわゆる「プログレッシブ」と呼ばれる者たちで占められるようになってきているからなのだろう。実際、シュルツは「中道」を掲げて立候補したいと表明している。

つまり、2016年にヒラリー・クリントンがトランプに破れた際、サンダースなら勝てたのでないか?という疑念がつきまとい、実際、近いところでいえば、サンダースを支持しキャンペーンに参加していたアレグザンドリア・オカジオ=コルテスが、若干29歳で連邦下院議員に初当選したように、現在の民主党は、よりプログレッシブな方向に向かっている。そして、その傾向に業を煮やしたのがシュルツだった、ということのようなのだ。

だから、民主党内からしかるべき「中道左派」の候補者が名乗りを上げれば、シュルツとしてはそれでひとまずは満足するのかもしれない。

もともとシュルツはStarbucksを、家庭と職場に続く「第三の場=サード・プレイス」として人びとが自由に意見を交換できる場にしたいと考え、実際に選挙が近づけば投票率を上げることに繋がるようなキャンペーンをStarbucksの店舗で展開してきた。彼からすればデモクラシーが干上がらないことこそが大切だったはずだからだ。だからトランプの再選をみすみすアシストすることは彼の本意ではないはずだ。

となると、シュルツの呼びかけに誰が応えることになるのか?が今後の関心事となる。

いずれにしても、彼の今回の発言は、トランプの台頭とそれに伴う共和党の変貌に合わせて、やむなく同様のポピュリズム的変化を迫られている民主党に対して、すっかり忘れ去られてしまった「中道」の意義や中身について再検討することを求めるものであると考えることができる。その検討をなるべく早く、遅くても2019年のうちに済ませておくよう促している。

なにしろ、そもそも本気で大統領になりたいのなら、トランプのように民主党の予備選に加わるところが始めることが最善であることくらい十分わかっていると思われるからだ。

むしろ気になるのは、このシュルツの動きに対して、同じCEO出身のマイケル・ブルーンバーグがどう反応するかだ。ニューヨーク市長を3期務めたブルーンバーグは、現在はインディペンデントであるが、民主党の大統領予備選に参戦する意向を、以前からほのめかしている。

このように、すでに2020年を目指した動きは始まっている。

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