FERMAT communications visionary

January 30, 2019

politics / society

tech / science


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junichi ikeda

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サイバー時代の覇権の鍵を握る5G?

January 30, 2019

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junichi ikeda

アメリカ連邦政府は、中国の通信機器メーカー大手であるファーウェイを起訴した。

Huawei and China, Facing U.S. Charges, Have Few Ways to Retaliate
【New York Times:January 30, 2019】

起訴の理由には、アメリカ企業の知的財産権の侵害や、イラン企業との取引、あるいは産業スパイ活動を社員に求める企業文化等が挙げられている。これら疑惑の真偽については、今後の対応を見ていくしかない。

むしろ、この動きで気にかけるべきは、これが次世代高速無線通信技術網である5Gネットワークの主導権を巡るアメリカと中国との間の競争に根ざしていると言われているところだ。

つまり、問題の所在は単にファーウェイの行動や5Gの技術覇権にあるのではなく、5Gの導入をきっかけに実現するモバイル・デジタル・ネットワーク社会の主導権の掌握のところにある。

簡単にいえば、ビッグデータやAI、ロボット、あるいはキャッシュレス、といった、2010年代に喧伝され、今までは個別に開発が進められてきたITコンセプトの多くが、5Gをきっかけに本格的に稼働し、それだけでなく互いに影響を与え収斂する方向にあるという理解があるからだ。

要するに、5Gの導入にともにIoT社会が本格的に離陸する、というわけだ。

その「離陸」にあたって、すでにキャッシュレス社会を実現し、個々人の「信用」調査をキャッシュレス社会の足跡=ログをデータ解析することで実行しようとする中国社会に優位性がある、という認識があるがゆえの警戒心といえる。

5Gの実装によって、各人のみならず、(近未来に実現される)各種機器から、様々なデータがリアルタイムで収集され、それが集まったそばから解析され、その解析結果が再び社会にフィードバックされることで、新たな社会的現実が生み出されていく、というサイクルが生まれる。

そのサイクルにいち早く取り組んだ国・企業から、将来有用なアプリケーションが開発されていくことになる。しかも、その成果は、中国の場合、国内にとどまるだけでなく、中国企業がすでに活動している諸国においても導入されていく可能性は高い。それはたとえばアフリカ大陸の諸国であり、「一帯一路」計画の中にあるユーラシア大陸諸国である。

だからこそ、アメリカ政府は、ファーウェイに対する同様の「対応」を、ヨーロッパやカナダ、日本といった諸国に求めている。ファーウェイが通信機器メーカーの世界的な大手として、様々な国の通信インフラ構築にすでに深く関わっているからだ。

実際、中国のIT企業の開発速度は尋常ではない。たとえば、北京でベンチャーキャピタルを主催するカイフー・リー氏――カーネギーメロン大学でPh.Dを取得し、以前にはMicrosoftやGoogleにも管理職として在籍していた――によれば、中国の場合、よく言われるように知的財産権の管理が社会的に「甘い」のだが、その結果、類似のソフトウェアサービスが次から次へと開発され、皆、市場の開発に躍起になっており、それが起業家に対してものすごいプレッシャーになっているのだという。

いわば、すべてがオープンソースの世界であり、それゆえソフトウェアそのものではなくそれを何らかの「サービス」に組み込んで販売しない限り、利益を出すことも出来なければ、開発資金を回収することもできない。そうした「圧の高さ」が、シリコンバレーのようにすでに「大手」による複占が確立されているところよりも、イノベーションに賭ける起業家の本気度を高めているのだという。

こうした背景からアメリカ政府は中国企業の動向――今回はファーウェイ――に注視せざるを得ないのだという。

一見すると、情報社会とは、多くのサービスが「見えない」まま実行されてしまう社会だが、もちろん、それら「不可視の」サービスを支えるのに、情報通信インフラは不可欠だ。そして、そのインフラは稼働率が高まるほど性能が高くなり、しかも市場の占有率は高くなる。それは、たとえば、AmazonのクラウドサービスであるAWSの成功などからも明らかだろう。

仮にサイバーウォーなる「戦い」に備えるとしたら、計算資源をどれだけ保有することができるかが、兵站の点で欠かせない要素になる。そのことを踏まえると「平時」において、どれだけ多くの成功したインターネット企業が国内に存在するのかは、重要な論点になる。

その意味で、今回のファーウェイへの対処のような事件は、今後も続くことになるのだろう。長い目で見ていくことが必要なところだ。

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