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Jeffrey Sachs 講演会

都内某所でJeffrey Sachs氏の講演会があり出かけてきた。Sachs氏はコロンビア大学教授で、今日の講演会は、彼がCo-chairを務めるMillennium Promise(MP)の活動を紹介するためのものだった。会合自体は、コロンビアの同窓会とMPの日本での活動拠点であるMillennium Promise Japanが共同して開催されていた。

Millennium Promise自体は、2025年までに地球上から極度の貧困をなくすことを目的にして2005年に始められた。実際には、主にアフリカ諸国を支援することが活動の中心になっている。

Sachs教授は現在コロンビア大学Earth Institute(EI)の所長を務めていて、講演の冒頭でも、EIでPh.Dプログラムを始めたことも紹介していた。このEI自体は最近日本でも雑誌などで紹介されたりしているが、基本的にはSustainability Developmentを進めるために設立されている。具体的には、地球環境保全であり、人口問題の解決であり、そして、貧困撲滅、などが対象となる。

つまり、EIで政策に資する研究を行うと同時に人材を育成し、具体的な活動としてはMPで対処していく、という枠組み。

人材育成はコロンビア大学だけで行うわけではなく、世界中の大学をネットワークして、Sachs教授自身も講義を持つプログラムも実施するようだ。具体的には、Emory University (アメリカ・アトランタ)、Sussex University (イギリス)などが組み込まれている。(残念ながら、日本の大学の名は挙げられていなかった)。

若干脱線するが、アメリカの大学は、グローバリゼーションの流れに対応して、世界中で分校を組織することが流行っている(特にビジネススクール)。コロンビア大学としては、少し前に見たBollinger学長の説明によれば、分校をつくるというよりは、世界の主要都市に研究期間を設置し、その地域特有の各種問題に具体的に対峙できるような仕組みを作るつもりだ、といっていた。このことをふまえれば、上のEIの活動もそうした構想の具体的現れの一つと言えそうだ。

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講演中、気になったことを記しておくと:

以前のエントリーで、ノキアによるMobile Moneyの試みについて書いたことがあったが、似たようなことを、MPとしてはエリクソンの協力を得て、ケニアで展開しているという。

開発国の支援方法として、しばしばmicro financeが取り上げられることがあるが、その具体策の一環として携帯電話端末を一種のバンキングアカウントとして使っていく。

ただし、micro financeだけでは与信機能がないため、貧困撲滅の基礎となる食糧確保=農業の恒常的運営、には不十分だということで、この点はどうするかが課題ということだった(農業は、農作物を育ててから収穫するまでタイムラグがあるため、どうしてもこの間は与信=creditの付与が必要になるのだが、銀行機能が未発達の地域ではここが最初のネックになってしまうということ)。

●Sustainability Developmentのための視座として、Nature誌の“Planet Boundaries”という概念が紹介されていた。

地球温暖化や生物多様性、chemical pollutionなどがその対象となるようだ(これは、Nature誌を実際に見てから記してみたいとは思う)。

●日本については、特に、Solar Energyについて、具体的に協力して欲しい、ということを強調していた。

様々なところで指摘されているが、日本の太陽光発電の技術は世界随一なので、是非ともその技術を利用したいということ。シャープの名前が何回か出されていた。

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アフリカは、近年改めて注目を集めるようになっていて、具体的には、アメリカと中国の関わりが増している。長年、主に鉱物資源の確保という点からアフリカは欧州諸国が関わってきたのだが、残念ながら、紛争や貧困は絶えないまま20世紀を終えてしまった。アメリカは、Sachs教授のMPだけでなく、Gates FoundationやClinton Global Initiativeのような、非政府団体を中心に、主に人道的観点から(エイズ撲滅など)支援を行っている。一方、中国は、もっぱら資源外交としてアフリカ諸国との繋がりを強めている(最近、改めて、アジア共同体構想が語られることが多いが、そのときの重要なプレーヤーの一つである中国は、アジアだけでなくアフリカも視野に入れていることになる)。

こういう動きの中で、通信分野で言えば、ノキアやエリクソンといったメーカーが、非政府団体や政府とのパートナーシップの下で、具体的な活動をしているわけだ。パートナーシップは、企業の活動を単なるビジネスとして(マスメディアなどに)受け止められないために必要になってくる。「開発」は単なる「投資」にとどまらないものなので、どうしても「大義(cause)」を担保するような仕組みや協力者が必要になる。

日本の企業も、こうした構図を理解しながら関わり方を見いだす時にさしかかっているように思う。

author: junichi ikeda

CONCEPT

FERMATは、コミュニケーションという社会の基底を与える領域の変化の徴候に照準しながら、未来のビジョンを描くことで、新たな何か=“X”、の誕生を促します。