• はてなブックマーク
  • Delicious
  • twitter
  • 印刷
Obama for Americaの転身が今後のウェブに対して意味すること

オバマ大統領の再選に大きく貢献した、彼の選挙本部であるObama for America(OFA)だが、選挙を終えて、その組織は、同じOFAという略称を維持しながら、Organization for Actionという、オバマのホワイトハウスの進める政策の実行を支援する組織へと様変わりした。

Obama to Turn Campaign Machinery to Promoting Policy
【New York Times: January 18, 2013】

組織変更自体はファーストレディであるミシェル・オバマがウェブ上のビデオで伝えた。1月21日の就任演説で明らかにされたように、第二期のオバマのホワイトハウスは、プログレッシブな施策(地球環境、移民問題、マイノリティ、ゲイマリッジ等)の推進を謳ったのだが、それらの施策を進める上での支援グループとしてOFAを改組したということなのだろう。そして、ミシェルがその改組を伝える役を担ったのは、あくまでも支援グループであるという位置づけにしたいからだったのだろう。

これで、選挙戦の直後に気になっていた、OFAはどうなるのだろう、という疑問に一定の答えが得られたと思ったのだが、しかし、味方であるはずの民主党の人びとも簡単にはこの動きを許したくはないようだ。

具体的には二つの問題が生じている。先に言っておくと、いずれもオバマの再選直後に、再選の原動力になったとして注目を集めたOFAのウェブシステムに関わることだ。

一つは、DNC(Democratic National Convention:民主党党大会)が、OFAの集金力に警戒を示していること。

Rebranded Obama campaign group causes frustration for DNC
【The Hill: January 22, 2013】

OFAは非営利法人の資格を得て、支持者からの寄付を受け取れる法人にするようだが、その結果、オバマ支持者の寄付金がOFAに集約されてしまう。DNCはあくまでも選挙対策のための組織で、既に2014年の中間選挙に向けて動き出しているわけだが、彼らは彼らで、各地の選挙戦に必要な資金を寄付として集める必要がある。そしてその部分でOFAとバッティングしてしまうことを懸念している。OFAが集めた支持者のリストを利用したいということもあるのだろう。そもそもOFAが集めた各種情報にしても、各地での民主党関係者の協力があったからこそ出来上がったものと考えれば、それらはOFAが専有するものではなく、DNCを通じて民主党で共有すべきものと考えてもおかしくはない。

このあたりは、議院内閣制をとらずに大統領制をとっているアメリカの場合、民主党にせよ、共和党にせよ、党首や総裁と呼ばれる存在がいないことも影響している。大統領は最も名の知れた人にすぎない。

とはいえ、ミシェルが改組を伝えたことから想像されるのは、OFA自体は、2017年以降のオバマ夫妻の活動拠点にもしようとしているようにも思えるところだ。オバマ大統領の場合、任期を終えてもまだ50代半ばであり、余生というにはまだ早い。同じく50代半ばで任期を終えたビル・クリントンが、大統領を終えた後、Clinton Global Initiativeを主催し、国際的に活動していることを踏まえれば、オバマ夫妻も、大統領後の人生を何に費やすかということを考え始めてもおかしくないだろう。ヒラリーのようにミシェルが上院議員に立候補という話もよく出るが、そのような方向に行くかどうかはさておき、黒人初の大統領夫妻となった二人にしてみれば、アメリカ国内の問題でやれることが多々あると考えているように思われる。そのための基盤の一つしてOFAを維持しようとしているように思える。そして、その方向性がDNCと微妙にバッティングすることになるのだろう。

OFAに関する二番目の問題は、例のNarwhalを始めとしたシステムのコードを公開するかどうかという問題だ。

As Obama heads back to office, a battle rages over the tech that got him reelected
【The Verge: January 22, 2013】

というのも、Narwhal自体はコスト削減のことも考えて、オープンソースベースで構築したため、そのコーディングに携わった開発者たちからすると、当然、オープンソースの流儀に則り、開発されたコードを公開したいと考えている。しかし、容易に想像がつくことではあるが、DNCからすると、せっかく共和党に対して築いたアドバンテージを失うことを懸念している。共和党も同種のシステムを利用できてしまうではないか、というものだ。

この点に関するOFA開発者たちの見方は、今あるシステムコードを隠匿しても四年後には使えない。技術の世界は常に進歩してしまうからだ。それくらいなら、コードを公開して、他の開発者たちの利用を通じてブラッシュアップしていく方がよほど生産的だという。裏返すと、システムコードをオープンにしない場合は、いわゆるオープンソースに対してDNCはノーを突きつけることになり、それは、今後、民主党がシステム開発者たちの支持を得られるかどうかにも関わる問題になる、という言い方もしている。

今回のオバマ大統領の就任演説には、オープンソースについての言及はもちろんなかったが、広い意味でこの問題も、プログレッシブな方向の一つといえるだろう。さらに、タイミング的には、先日のAaron Swartzの自殺が、オープンネスを始めとしたインターネット社会の振る舞いを理解しない政府当局がもたらした死だと理解する声も出てきている中では、デリケートな話題の一つにもなっている。したがって、この点でも、OFAのシステムコードの公開については柔軟な対応が政治的には必要になると思われる。

以上の二点が、OFAの動きに対する問題として浮上しているものだ。一つは、OFAのいわばソーシャル的な機能について、もう一つは、それらソーシャルな機能を支えるシステムについてのものだ。

翻って、オバマ大統領の誕生ならびに再選には常にウェブによる下支えがあった。2008年の予備選において圧倒的優勢にあったヒラリー・クリントン候補を破ったのも、あるいは、2012年の本選において、スイング・ステイツでロムニー候補を破ったのも、いずれも背後にウェブによる機動力のある選挙戦略があった。

その意味では、OFAをどう扱うかは、ウェブを最大限に活用したオバマ大統領にとっては、今後のウェブやIT業界との関わりをも示唆するものになると思われる。

面白い展開としては、オープンソースを使ったOFAのシステムコードはオープンソースの流儀に沿って公開する。そのコードを使って共和党側も新たなシステムを構築して次回の選挙戦に臨む。しかし、共和党側がそうしてくることは民主党側もわかっているから、さらにその先を行くようなシステムを構築していく・・・。といった具合に、システム開発競争が、選挙戦の裏で常に繰り広げられるようになるとしたら面白い。その意味でも、オープンソースで作ったコードは公開する、というゲームのルールを最初に民主党側で示せるかどうかが鍵となる。さらに、、そうなれば、世界中で、それらのシステムを参考にして選挙キャンペーン用のシステムが開発されるようになるだろうから、それはそれで大きな影響力を持つように思えてくる。

このように、地味だが波及可能性のある話題として、OFAの動きについては注目して行きたい。

author: junichi ikeda

CONCEPT

FERMATは、コミュニケーションという社会の基底を与える領域の変化の徴候に照準しながら、未来のビジョンを描くことで、新たな何か=“X”、の誕生を促します。