• はてなブックマーク
  • Delicious
  • twitter
  • 印刷
オープンソース流の開発が試みられるHyperloop構想

起業家のElon Muskが公表したHyperloop構想に対して、オンラインインキュベーターであるJumpStartFundが関心を示し、クラウドソーシングを援用した開発、企業化の試みが始められたという。

Incubator will try to turn Hyperloop into reality
【SFGate: September 26, 2013】

この記事を読むと、Hyperloop構想が、あたかもかつてのLinus開発のように、オープンソース流の方法で開発されそうな情勢にあるようで、Hyperloop構想のみならず、その開発の動き自体もイノベイティブで大変興味深い。

Elon MuskのHyperloop構想とは、ロサンゼルス(LA)とサンフランシスコ(SF)との間の地上高速移動手段として、長大なチューブを建設し、その中をカプセル状の乗り物を浮遊させて打ち出すもので、構想通りにいけば、LAとSFの間を35分で移動できるという。高速道路であるInterstate 5に沿って建設することで用地取得のコストを下げ、全体として75億ドルで実現できると見込んでいるという。この金額は、同じくLA-SF間で建設が検討されている高速鉄道の費用の10分の1程度にあたる(従って、中には、この高速鉄道計画への牽制の意味も込められているのではないか、と政治的に穿った見方をする向きもあるようだが)。このようにHyperloop構想は技術的にも経済的にも、従来の高速鉄道に代わるアイデアとして注目を集めている。

ただし、このHyperloop構想は、今年8月にMuskがブログ上でアップしたものなのだが、当のMusk自身は、Space X(宇宙開発事業)やTesla Motors(電気自動車事業)の方が忙しく、このHyperloop構想に取り組む時間がない、ということも同時に公表しており、第三者がこのプロジェクトに取り組むことに期待していると述べていた。要するに、構想だけは公にしたが、実現についてはノープランということだ。

そこで、Hyperloop構想の実現に手を上げたのが、クラウドソーシングによる事業開発を手がけるJumpStartFundというオンラインインキュベーターだ。このJumpStartFund自体がそもそもスタータップの一つなので、果たして、この方向で本当にHyperloopが実現するのかは、正直なところ、見当がつかないのだが、しかし、オープンソース流の開発/事業化を目指すという動き自体は面白い。それが冒頭に記したことだ。

つまり、Muskのような成功した起業家が、おそらくはその起業家ネットワークの中から思いついたアイデアをまずはウェブ上で公開してしまい、そのアイデアを実現するために必要な技術開発や検証、事業化に必要な資金調達、事業の目安が立った段階での法人化、といった具体的プロセスをウェブ上で主にはクラウドソーシングを活用しながら進めていく。

こういった一連の動きは、従来取られてきた、ある程度完成した技術を用いて法人化から始める起業やイノベーションのルートと異なるもののように思える。おおまかにいえば、まずは構想があって、その構想の実現を「走りながら」考えていく、ということだ。その意味でオープンであり、そのオープンなプラットフォーム上で多くの人の知恵や資金を当てにするという点でクラウド(crowdの方)に依拠する方法だからだ。また、Hyperloop構想自体が、交通手段という公共性が高い事業であり、社会インフラ建設という点で長い年月(数年から十数年?)を要するものである点で、オープンな進め方が、そのまま情報の公開という文脈にも結びつくように思われる(この点は、先日寄稿したWIRED日本版9号の「オープンガバメント」特集とも通底するものだと思われる)。

インフラ建設などの長期に亘る計画については、計画立案時に想定された技術が建設着手時には既に陳腐化している、というような問題が発生しやすい。この点でもオープンであることは集団的意思決定という側面から将来的に資することもあるのかもしれない。つまり、実装の段階で一定の弾力性(resilience)を得られるのかもしれない。

といっても、もちろん、これらは可能性を述べているにすぎないので、今後、実際にJumpStartFundがどのようにHyperloop構想をオープンソース流で具体的に実現していくのかに掛かっている。その点では記事にもある通り、Space Xでdirectorを務めたMarco Villaと、American Society of Civil Engineersの会長であるPatricia Gallowayが参加していることの意義は大きいのだろう。Villaは「構想の現実化」についての実績がある。一方、Gallowayは知恵や人材のクラウドソースの点でネットワークがあると考えられる。

いずれにしても、新たな事業化の試みとして、Hyperloopそのものの実現に限らず、オープンソース流の、クラウドソーシングをも活用するケースとして注目したい。もちろん、ベンチャーキャピタルやアントレプレナーシップの中心としてのベイエリアから出てきた試みであるという点でもだ。

author: junichi ikeda

CONCEPT

FERMATは、コミュニケーションという社会の基底を与える領域の変化の徴候に照準しながら、未来のビジョンを描くことで、新たな何か=“X”、の誕生を促します。