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テレビの呼び込み役へと舵を切るTwitter

11月にNYSE(ニューヨーク証券取引所)に上場を予定しているTwitterだが、上場後の成長戦略のポイントはテレビとの共生に置いているようだ。

Can Twitter Save TV? (And Can TV Save Twitter?)
【Forbes: October 7, 2013】

現在、Twitterは、時折タイムラインの中に宣伝ツイートを挟み込み、それを一つの収益源にしているが、それは頻度として限界がある。ユーザーに対して無料サービスにしているからといってタイムラインのほとんどがスポンサーからの告知ツイートになってしまったらユーザーは離れていってしまうだろう。30分のテレビ番組でCMが半分近くになってしまったらどうなるだろう。多くの人は他に娯楽をもとめてしまうことだろう。生理的な限界を超えない範囲でそれとなくメッセージを滑りこませるのが広告の妙だが、それと同じことがスポンサーツイートにも当てはまる。

もちろん、広告スペースを販売するメディアとしての立場からすれば、売上は、広告スペースの総量と単価の掛け算で与えられるため、単純にスペースの数を増やせばよいというわけではない。むしろ、総量に制限を設け、単価を上げる方がよい場合もある。ただし、この単価を上げる方法論では、多くの場合、好景気下で、かつ、当該メディアが最も人びとの関心を集める媒体であることが前提になる。残念ながら、Twitterが置かれている環境はこの条件にそぐわない。景気は復調しているとはいえないし、インターネット上では代替となるメディアやコンテントが溢れているため、単価を上げるどころか、維持することもなかなか難しい。

そこで、Twitterが取ろうとしている方策が、インターネットの登場以後、押されているとはいえ、今尚、最も人々の関心を集め続けている「テレビ」の視聴を促す導き手、要するに呼び込みの役を担うというものだ。そうすることで、テレビ事業との間でウィン・ウィンの関係を作ることを試みる。

一般にウェブ企業、IT企業というと、既存ビジネスのdisrupter(破壊者)とみなされることが多い。実際、disrupterを自認する企業も多い。また、disruptを目的にすることで、創業者や社員のモチベーションが上がることにも繋がる。その場合も、実は単なる破壊者ではなく、better world(よりよき世界)を作るために、という目的が掲げられ、正当化されることが多い。しかし、そのような破壊者的有り様は、既存事業者からすれば単なる敵対者でしかなく、できるだけ早期にそのような芽を摘んでしまうことが合理的対処となる。この点で言えば、GoogleやAmazonが成功したのは、Googleであれば、群雄割拠する開始間もないウェブ広告の領域に進出したからであり、Amazonであれば、もともと競争の激しい消費者向け流通業(リテール)に進出したからだった。

それに対して、メディアの世界は競争よりも安定の世界であり、企業体としてはコングロマリットが存在する業界だ。いわゆる寡占市場になるわけだが、しかし、多くの寡占事業体がそうであるように、メディア・コングロマリットは、その業界特有の金融事業体の役割を担っており、一概に否定すべきものともいえない。当たり外れが頻繁に生じるコンテント開発においては、胴元となる存在がある程度は必要であり、作品数をこなすことのできる(金融的)体力をもつことで、結果的に多くの作品の制作という試行錯誤に取り組むことができる。

この点で、メディア事業体にとっては、インターネット/ウェブは少しばかり劇薬に過ぎた、といえるのかもしれない。生産から流通までの全てをオールデジタルで行ってしまえば、従来とは全く別系統の生産/流通システムが出来上がってしまうからだ。この点で、ハリウッドのようなプロデューサーシステムが稼働しているところでは、配信事業者としてのテレビビジネスと、コンテント製作者としての制作スタジオとの利害が微妙に交差することになる。それは、今までも何回か指摘したように、地上波に代えてケーブルが、エミー賞をとるような質とポピュラリティの両方を兼ね揃えた作品がファーストランされる場所になっている。あるいは、視聴からすれば既に「テレビ」ではなく「ビデオ」の時代に移ってしまっている現実を踏まえて、NetflixでファーストランされたHouse of Cardsが注目を集めてしまうわけだ。

とまれ、そのような配信事業者としてのテレビと競合する、ないし敵対するウェブ事業者、というイメージを払拭して、むしろ、テレビと共生する道を選択する、というのが、Twitterが上場に向けて、現在外部に伝えているイメージだ。

その時のキーワードは「リアルタイム」だ。要するに、特定のテレビ番組を「実況」ツイートすることであり、そうした実況ツイートの影響力で、現在、テレビを見ていない人をテレビ視聴に呼びこむことで視聴率の向上に寄与しようとする。そうすることで、テレビのパートナーの立場を得ようとする。

もちろん、PCやスマートフォン/タブレットの普及によって、多くの人がテレビ受像機以外にも「スクリーン」を得てしまったため、リアルタイム視聴そのものが自然減してしまう要素もあるわけだが、それに対しては、タイムシフト視聴を可能にする仕組みも用意され始めている。アメリカ最大手のケーブルオペレーターであり、現在は、NBC Universalの親会社でもあるComcastによって、Twitterを経由してサーバーから必要なビデオクリップをストリーミングするサービスが開発されている。

Twitter Gets Its Strongest TV Tie-Up So Far, With an Ambitious Comcast Deal
【AllThingsD: October 9, 2013】

要するに、Comcastの立場からすれば、Twitterを介することで、スマートフォンを一種のリモコンにしてしまうようなものだ。逆に、Twitterの立場からすると、テレビ映像への入り口=ポータルとしての位置づけを得られるかもしれない。Flipboardが、Twitterを介して、個人向けに調整された、テイラード・マガジンの役割を担ってしまったようなものだ。

Twitterは既に、スポーツ中継の注目シーン(たとえば、NBAの中継でバスケット選手がダンクシュートを決めたシーンなど)を短いCM付きで視聴できるツイートを提供しているが、そうしたビデオ付きツイートが増えることで、いわば、公式のビデオリンクが頒布されることになる。

このようにして、Twitterはテレビとの共生を図ろうとしている。リアルタイムツイートに特化したからこそ可能な試みであり、この点で、ユーザー間の交流が中心となるFacebookなどのソーシャルネットワークと差別化を図ることになるのだろう。そのような目論見が首尾よく遂行できるかどうかによって、IPO後のTwitterの動きも変わるのだろう。

ちなみに、Twitterによれば最近のユーザー数の増加はもっぱらアメリカ国外のものであり、したがって、以上の試みはアメリカ以外でも行われる予定のようだ。その点で、今後のTwitterの動きは、各国ごとに異なるテレビビジネスの慣習にも左右されるのだろう。この点で、各国ごとのテレビ文化とどう折り合いを付けるかが、Twitterの海外戦略の中で重要な課題になるのだろう。

author: junichi ikeda

CONCEPT

FERMATは、コミュニケーションという社会の基底を与える領域の変化の徴候に照準しながら、未来のビジョンを描くことで、新たな何か=“X”、の誕生を促します。