ブルームバーグ、大統領選出馬へ?

2月1日から始まる大統領予備選(プライマリー/コーカス)を目前にして、以前、ニューヨーク市長を務めたマイケル・ブルームバーグが、インディペンデント(独立派)として立候補し、直接本選に臨む可能性が出てきた。

Bloomberg, Sensing an Opening, Revisits a Potential White House Run
【New York Times: January 23, 2016】

Michael Bloomberg Mulling Run for President as Independent
【Wall Street Journal: January 23, 2016】

Former New York mayor Bloomberg mulls presidential run on heels of Trump surge
【The Guardian: January 24, 2016】

ニューヨーク・タイムズを筆頭に、この話題で、米英の主要報道サイトは、現在、持ちきりになっている。もちろん、現段階では観測記事に過ぎないのだが、その見立てによれば、予備選が本格化する3月には立候補の表明がなされるのではないかといわれている。3月1日は、民主党・共和党ともに多くの州で予備選が実施され、大勢を決めるといわれる「スーパー・チューズデー」が控えている。その結果いかんで出馬するかどうかという意思決定がなされるということのようだ。

ブルームバーグ社の創業によって巨万の富を築いたブルームバーグは今までも何度も大統領選への出馬が噂されてきた。先述したように、彼は2002年から2013年まで三期、ニューヨーク市長を務めた実績もある。ニューヨーク市の人口は800万人、都市圏としては2000万人ともいわれる全米随一の都市であるため、その統治体験は、州知事に相当するとみなされ、ブルームバーグに限らずともニューヨーク市長経験者は大統領候補者としてみなされてきた。たとえば、ブルームバーグの前任者であるジュリアーニ元ニューヨーク市長などもそうだった。

(ちなみに、人口が1000万人を超える州はカリフォルニアやテキサス、ニューヨークなど7州に過ぎない。一方、人口が100万人に満たない州もデラウェア州など7州ある。)

ただし、ジュリアーニの場合は共和党員であるため、共和党の予備選に参加する必要があった。しかし、ブルームバーグはニューヨーク市長在任中に共和党からインディペンデントに転身し、そのまま民主党・共和党のどちらにも属していない。そのため、今回、立候補するとすれば、いきなり本選に臨むことになる。

一般に二大政党制が根付いた社会として、アメリカの場合、民主党、共和党の予備選を勝ち抜いた候補者二人が本選で争う、というイメージが強いが、もちろん、その二人以外の候補者も存在する。ただ、多くの場合、泡沫候補であるため、本選の行方を左右することはない。しかし、ブルームバーグのような大物となると話は別で、第三極として、民主党・共和党の候補者との間で票を奪い合うことになる。そのため、ブルームバーグが当選するかどうかに関わらず、本選にも影響を及ぼすことが想定される。

(たとえば、最終的に最高裁の判断にもつれ込んだ2000年の大統領選の場合、ブッシュとゴアの得票数があまりにも接近していたため、第三位につけたラルフ・ネーダーが立候補していなかったら状況は違っていたのではないか、とはよく指摘されることだ。)

ブルームバーグが出馬する場合、意外と見過ごすことができないのは、彼がユダヤ系であることだ。もともとユダヤ系は民主党支持者が多い。共和党で唯一のユダヤ系連邦下院議員だったエリック・カンターは、ティーパーティの攻勢にあい、予備選の段階で負けている。今までユダヤ系の大統領がいなかったこともあり、それだけで話題になることでもある。

加えて、民主党の候補者であるヒラリー・クリントンもニューヨークが地盤である(オバマ政権で国務省長官を務める前は、ニューヨーク州選出の上院議員だった)。さらにいえば、ドナルド・トランプもトランプタワーを有する不動産王であることからニューヨークとの関係も深い。だから、情勢いかんによっては、三つ巴のニューヨーク対決が本選で繰り広げられるのかもしれない(その場合、南部、西部、中西部の人たちは白けてしまうのかもしれないが)。

今記したように、ブルームバーグが出馬を検討してもよいと考えた背景にあるのは、今回の大統領選における、予備選前のいささか度を越した不可解さにある。民主党は、クリントン優勢が伝えられるものの、社会民主主義を唱え、より左派的なバーニー・サンダースの存在感も相変わらず揺らぐようには見えない。一方、共和党は、いまだに12人が立候補し、そのうち、ドナルド・トランプが人気を保持したままという状態だ。予備選前の段階ですでに相当混乱している。

たとえば、大統領選の年は、通常、過去の有名な大統領に関する伝記や歴史書が多数出版されるのであるが、今回目立っているのは、共和党とは何だったのか?ということを問う書籍のほうだ。もちろん、これは2000年代に入り影響力を増したティーパーティの動きに触発されたものなのだが、トランプの攻勢を見るにつけ、アメリカの知識人もこれは何か今までとは異なることが起こっていると感じているようだ。その結果、党の起源やありようから見直す必要を覚える場面が増えているのかもしれない。

そのような時に、独立派としてブルームバーグが立候補することは、混沌としている状況に、いわば一つの参照点=重心を与えることに繋がるようにも思える。

もちろん、現状では、ブルームバーグが立候補は単なる噂にすぎない。けれども、目前に控えた予備選の状況いかんでは、噂も真実へと転じるのかもしれない。

ということで、2月から始まる予備選、まずはアイオワとニューハンプシャーの行方を気にかけてみたい。

author: junichi ikeda